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「小学生の時、走るのが嫌だった」 日本最速ランナー・田中希実でさえも闘った緊張

レースではグッと力の入った鋭い視線で真剣な表情を見せる田中【写真:奥井隆史】
レースではグッと力の入った鋭い視線で真剣な表情を見せる田中【写真:奥井隆史】

緊張で悩む子どもたちへ、田中希実が送るアドバイス

 いつも通りの流れで集中力を高める一方、そこに厳しいレールを敷いているわけではない。不測の事態が起きたとしても、できる限り気持ちの波ができないよう努め、トラックに立つ。

 トラック種目では、号砲直前に一列に並んだ選手が一人ずつ紹介され、場内の大型モニターに表情が映し出される。田中は「特にこれといって考えていることはなくて、『ちゃんと映ってるかな』というくらい」と心境を明かす。優勝候補として期待される国内レースならしっかりと映るが、海外では異なる。「そんなに注目選手でもないので、カメラがすぐに次の選手に行ってしまう。『今の全部映ったかな』って」と笑う。

 9日間で5レースを戦い抜いた7月のオレゴン世界陸上。身も心も過酷な異例の3種目挑戦だった。会場近くに家を借り、ソファーで趣味の読書を楽しんだほか、父の健智コーチと喋りながらジョギングをしてレースの合間に気持ちをリフレッシュ。タフな大会期間中も常に気が張っていたわけではない。

 百戦錬磨のトップランナーでさえも緊張はする。その中でどれだけ競技だけに集中し、自分の力を出し切れるか。経験の乏しいジュニア世代なら、なおさら直面する課題。「緊張で悩む子どもたちにどんなアドバイスを伝えますか」。そんな問いに、日本最速ランナーは自身の幼い頃を思い返しながら言葉を繋いだ。

「私自身も小学生の時は凄く緊張しいで、レース前も走るのが本当に嫌だったんです。でも、走り出したら不思議と落ち着くことが多い。走りながら頭が真っ白になるのは、やっぱり結果のことを考えすぎちゃっているからかなって思います。自分が小学生の時に緊張していたのは、結果を出したいからというより、『今からしんどい思いをしなくちゃいけない』という緊張でした。

 でも、スタートしてからは大丈夫。だから、あまり結果のことを考えずに走った方が小、中学生にはいいのかなと思います。今も緊張するんですけど、小学生の時に感じていたような緊張とは違うし、ただ単に慣れてきたのかなって思います。だから、いつか慣れるので、緊張しすぎる自分をそこまで責めないようにしてほしいですね」

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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