トップ選手になるなら「柔軟性」を磨け その有り無しが“伸び悩み”につながる
筋力と柔軟性は切っても切れない密接な関係にある。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏が、スポーツトレーニングの舞台裏を語る連載。今回はトップ選手を目指すキーポントになる「柔軟性」について、卓球の福原愛、バドミントンの藤井瑞希など日本を代表するアスリートの個人指導経験を持つ同氏に訊いた。
適度な柔軟性≒長い現役生活…怪我のリスク軽減とプレーの質を磨く体作りに有効
筋力と柔軟性は切っても切れない密接な関係にある。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏が、スポーツトレーニングの舞台裏を語る連載。今回はトップ選手を目指すキーポントになる「柔軟性」について、卓球の福原愛、バドミントンの藤井瑞希など日本を代表するアスリートの個人指導経験を持つ同氏に訊いた。
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競技の特性いかんに関係なく、すべての競技者は適度な柔軟性が必要です。適度な柔軟性があると、プレーの質を高め、力を発揮し、長く現役を続けることにもつながります。
例えば股関節。短距離の選手であれば、前後のストライドを広げることでスピードが上がり、テニス選手であれば横のストライドを広げることで、ボールを拾える範囲が拡大します。このように柔軟性の向上は怪我のリスク軽減だけではなく、プレーの質を磨き、良い結果を残す体作りにも欠かせないのです。
逆に言うと、柔軟性の低下はプレーの質の低下につながります。
テニスを例にお話をしましょう。テニスの打球動作は、最初に素早くラケットを引き、次に筋肉の反動の力を利用して振ります。この時使われる筋肉の一つが、胸を覆う大胸筋。もしも大胸筋に柔軟性が足りなかったら、十分に腕を引くことができず、素早く、力強いショットを打ち返せません。そして、パワーを出すため、次第に体ごと後ろにひねってラケットを引くようになります。
すると、選手の体はどうなるのか? 体全体に力が入り、その分、無駄にエネルギーを使うことになります。エネルギーの消耗が激しいため、当然、集中力やプレーの精度もどんどん下がり、良いプレー、勝てるプレーも続かなくなってしまうのです。
体の使い方は、できるだけ少ない筋肉で効率良く動かして、パワーを出すのが理想的です。そうなればスタミナは持続し、試合後の回復力も高い。結果、怪我をしないことにもつながります。