ラグビー世界1位大国の栄養サポートの舞台裏 W杯で“決勝トーナメントに残る強豪と他の国”の違い
食事を楽しむアイルランドの姿を表現したガードナーさんの言葉
また、明確なメニューリクエストがある反面、選手に対して厳しい制限を強いることもありません。
ガードナーさんは「私たちのチームの食事にルールはない。あくまで要望をヒアリングしながら、選手たちの食べたいものを用意する」とも言います。選手たちは皆、何をいつ、どのぐらい食べればよいのかは自分自身でよくわかっているため、栄養士が細かく制限をしないほうが、よい環境が作られるからです。
そういえば、19年大会の終了後、ウッドさんに、大会期間中ホテルで提供された日本食で特に美味しかった料理、選手からのリクエストが多かった料理を聞いたところ、美味しかったのは「海老の天ぷら」。毎食、選手から出してほしいとリクエストがあったのは「ラーメン、味噌汁、寿司」だと言っていました。
時には好きな物を食べたり、開催国の食事を楽しんだりと、長期にわたり緊張が続く大会では、メリハリをつけることも大切です。試合に合わせてストイックに節制することはあっても、最終的に何を選択するかは選手自身に任せる。選手たちを信頼していることがわかるエピソードだと思います。
大会を勝ち進んでいくためには国内外問わず、様々なサポート体制を整えることが必要です。今大会、日本代表も初めてシェフが帯同しましたし、ラグビーリーグワンの各チームや大学ラグビーチームでも、栄養士が関わる機会が増えています。しかし、アイルランドのようにフルタイムの栄養士等が、育成年代からトップレベルまで一貫したサポートを行える体制には、まだ至っていません。
ラグビー日本代表がベスト8に勝ち進むための検証が今後行われる中、強化のための重要なファクターの一つとして、食事と栄養についても環境整備が必要なのではないかと思います。
最後に、ガードナーさんのコメントのなか非常に印象に残った言葉を一つ。「ラグビー選手は素直で、食べることが好きで、たくさん食べる。しかも時代遅れではない」。トップアスリートとして食事を楽しむアイルランドの選手たちの姿を、見事に表現している言葉だと感じます。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)