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ラグビー世界1位大国の栄養サポートの舞台裏 W杯で“決勝トーナメントに残る強豪と他の国”の違い

W杯で決勝トーナメントに残るような強豪とその他の国に大きな差

 2019年のW杯日本大会の際、弊社は組織委員会からの依頼で、諸外国の代表チームのメニューリクエストを国内のホテルやキャンプ地に伝えるコーディネートを担当していました。実はこの時、全参加国のうち、唯一、「日本の組織委員会の担当栄養士と打ち合わせをしたい」と申し出たのが、エマ・ガードナーさんの前任者、ルース・ウッド・マーティン栄養士でした。

 マーティンさんは、06年~22年にラグビー代表チームを担当。つまり、ガードナーさんの言う「目覚ましい進歩」を実現するため、協会とともに尽力してきた方です。

 彼女はW杯本大会前、チームに先んじて来日。アジアで初めて開催される大会ということもあり、日本でどのような食事が提供されるのか、また、アイルランドのメニューリクエストが意図した通りに伝わっているかを確認するため、面談を申し入れてきました。

 その後は、滞在先のホテルの調理担当者と、メニューの内容を一つひとつ確認。提供する肉の大きさ、アレルギー対応、オートミールの調理方法など、双方の認識に間違いのないよう、きめ細かく打ち合わせをしていました。

 彼女は大会期間中もチームに帯同しましたが、栄養士が来日し、チームが敗退するまで滞在した国は多くはありません。それだけに、栄養管理に時間とお金を投資する姿勢に感心しました。

 過去、アイルラインドを始め、オーストラリアやイングランドなどの食事の内容やメニューリクエストをみてきましたが、W杯で決勝トーナメントに残るような強豪チームの食事は、その他の国と大きく異なる点があります。

 それは、「チームにとって食事とは何であるか」という考え方が明確に示されている点です。

 彼らがホテルのシェフやサービス部門のスタッフにリクエストするガイドラインは、単純なメニューリクエストではありません。代表チームが望むメニューの考え方に始まり、どのような食材を用意し、どのような方法で調理するのか、そして、提供する頻度やタイミングにまで細かく触れています。

 例えば、食材は新鮮であること、野菜は可能な限り地元で採れたオーガニックのものを使用すること、卵は平飼いのものであること、味付けは基本的に塩・胡椒すること。ほか、お皿の大きさや、食事の開始何分前にはセッティングを終了する……などなど、朝食、昼食、夕食、プレマッチミールごとの要望が5~10枚の文書にわたり記載されています。

 このメニューリクエストに沿って担当の栄養士と現場のシェフやサービス担当者が一つひとつ調整していけば、どこで合宿を組み、大会に臨んでも、選手たちは安心して試合に臨むことができます。海外遠征が多く、言葉や宗教、マナー、食文化などが全く異なる国でトラブルが生じないようにするためには、ここまできめ細かくリクエストを記載する必要があるのだと痛感しました。

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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

 ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJリーグ横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けてのスポーツ食講座なども行う。著書に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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