五輪でも世界に評価された日本の食文化 今、海外アスリートに「米」が見直される理由
Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「スポーツ食における米の大切さ」について。
公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏の連載、今回は「スポーツ食における米の大切さ」
Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「スポーツ食における米の大切さ」について。
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秋を迎え、新米の季節になりました。
日本人の米離れが叫ばれる昨今ですが、アスリートにとっては、米は最良のエネルギー源です。同量のパンやパスタなど他の主食と比べ、脂質量が圧倒的に少ないのが米の特徴。そのため、消化によく、運動前後に食べても内臓に負担がかかりません。長時間の練習後や、強度が高く、緊張感のある試合後は、エネルギー源である筋グリコーゲンが枯渇しているうえ、体の消化機能が普段より低下します。ですから、高糖質・低脂肪の米は、筋グリコーゲンの回復や疲労回復に最適の主食、といえるのです。
ところが、日本では年代を問わず、スポーツ選手・スポーツをする子どもの間で、エネルギー源となる炭水化物が不足しやすいのが現状です。その理由として、運動後に食欲が低下して十分な食事量が摂れない、たんぱく質ばかりを優先する、太ることを気にして炭水化物を控えるといった傾向が挙げられます。子どもに関しては食が細く、講演会などでも「食べられる全体量が少ない」と悩む保護者の声が多く寄せられています。
「高たんぱく質・高糖質・低脂質」がアスリート食の基本です。主食の米はその中心となる食材。私もスポーツ栄養士の一人として、健康とパフォーマンスの向上のために、もっと積極的に米を食べてほしい、とアスリートに向けて常に発信しています。
一方、海外のアスリートの間では、健康や環境への配慮(SDGs)等の点から、米が見直されています。
米料理は、パンにバターを塗ったハム&チーズのサンドイッチや、調理油を使うパスタ料理より、はるかに脂質を抑えられます。そのため米が主食ではない国でも、運動や試合の前後の補食や食事に適している、と評価されています。また、米はグルテンフリー食品であることも、グルテン不耐症・過敏症の選手が多い欧米のアスリートたちに求められる理由です。
彼らは例えば、スープストックや水でゆでた米を、肉や魚をトッピングしたライスボウル(いわゆる丼もの)にしたり、ライスサラダやスープ・シチューの具材にしたりして、食べるのが定番です。海外チームのメニューリクエスト(滞在先に提出する料理の要望)やチーム担当のスポーツ栄養士の話によると、大きな大会や遠征時に用意されるサラダバーなどにも、米を使った料理は必ずといっていいほど用意されています。ちなみに、現在、私自身が栄養サポートをするラグビーチームでも、外国人選手の多くは遠征先やクラブハウスの食堂で、パンよりもご飯をよく食べています。