スポーツ界の「食」に変化 世界のラグビー強豪にベジタリアンが増えているワケ
世界のラグビー強豪チームに増えるベジタリアン
前述の通り、ワールドラグビーの取り組みを受けて、世界のラグビー強豪チームでも環境保全や動物愛護などの配慮し、オーガニック食品や地場食材を取り入れ、ベジタリアンを選択する選手が増えています(ベジタリアンには植物性食品のみを摂る人だけでなく、本人の選択により乳・乳製、卵、魚、畜肉以外など、植物性食品以外を食べる人もいます)。「あんなに大きな体をしているのに!」と驚きますよね。
2014年、国際オリンピック委員会(IOC)は「オリンピック・アジェンダ2020」を採択。そこには、選手村や競技会場などの関係施設で用意される食品は、持続可能性に配慮したものでなければならないとする、調達基準が明示されています。
来年開催の2020東京オリンピック・パラリンピックの選手村では、GAP認証(農産物や家畜の衛生、環境保全など様々な基準をクリアしたものに与えられる認証)、JGAP認証(人権の尊重とアニマルウェルフェアを加えた総合的なGAPとして日本GAP協会が運用)などの食材の調達が基準とされています。この動きはもちろん、その次の2024フランス大会でも受け継がれることになります。
日本ではオーガニックやベジタリアンといった言葉は、一部の健康志向の人が実践する「ライフスタイルの一つ」という認識が一般的には強く、環境保全に基づく背景を含んだ選択であるという認識は、まだまだ浸透していないと感じます。
しかし、世界のスポーツ界では、地球規模で起こっている食の課題や環境の変化を理解し、何を選び、食べるかを、率先して考え、実践するスポーツ団体や、自ら実践、発信する選手たちが増えてきています。今回のラグビーW杯、そして2020東京を通じ、単に食事の量や栄養の話だけでなく、食のサステナビリティを深く理解し、グローバルな視点でスポーツ食の考えを発信する日本のアスリートたちが現れることを、食に携わる一人として、期待しています。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)