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「勝つために食べる」だけじゃない 「脱・勝利至上主義」目指す米スポーツ組織の教育

セミナーで触れられた「ヘルシースナック」の大切さ

 さて、講義のなかでは、スポーツをする子どものバランスの取れた食生活の中で、「ヘルシースナック」の補食とサプリメントではない食品(Real Food)から栄養を摂ることの大切さについても触れられていました。

「ヘルシースナック」とは、たんぱく質や食物繊維、カルシウム、糖質などが補給できる食品を指します。

 代表的な食品として挙げられるのは、ピーナッツバターをたっぷりぬったサンドイッチ、ナッツ、ヨーグルト、グラノーラバー、牛乳、チーズ、果物。日本でいえば、ピーナッツバターのサンドイッチの替わりにおにぎりや海苔巻き、いなり寿司、肉まん、あんまんなどが良いのではないでしょうか。

 また、主食に関しては試合前を除き、全粒穀物のパンや、パスタ、米を選ぶことを勧めています。

 全粒穀物は精製された穀物と比べ、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富です。一方で繊維質が多いので、消化に時間がかかります。そのため、試合前はパフォーマンスに影響しないよう、消化によい白米や精製されたパンにパスタ、じゃがいもを摂るように勧めています。

 そして、全体的なポイントとして挙げていたのが、「可能な限り加工食品を避け、精製されていない食品を選ぶ」ことの大切さです。これも、冷凍食品をはじめ加工食品を日常的に食べるお国柄ならではのアドバイスといえるでしょう。

「True Sport」の講義とアメリカの育成年代に向けた栄養のガイドラインをみて感銘を受けた点は、サスティナブルな食環境への知識や考え方が、当たり前に組み込まれていた点です。

 栄養バランスの指標となる大皿のイラストには、穀物、たんぱく質の豊富な食品、野菜・果物、それぞれに「どんな食品を摂るか?」も示されていますが、内容は「脂質の少ない肉を食べましょう」といった栄養素の観点からのアドバイスに留まりません。

 植物性たんぱく質は、「穀物、豆、キヌア、豆腐など地球環境に優しいものを摂りましょう」。動物性たんぱく質は、「平飼いの鶏の卵や鶏肉をなるべく選ぶ」「穀物ではなく草を食べて育ったグラスフェッド(放牧飼育)の牛や豚をなるべく選ぶ」とあります。

 これらは動物福祉の観点から、生産効率を重視したものを買うのではなく、健康的に飼育をされているものをなるべく選びましょう、という考え方からきています。たんぱく質は大前提として「動物性と植物性のものを1/2ずつ摂りましょう」とも書かれていますが、これも地球環境に配慮し、温室効果ガスの排出につながる動物性たんぱく質を減らしましょう、という考えの表れです。

 ほか、主食には「じゃがいもやパンはなるべく、地元の畑で採れたもの、地元のベーカリーでつくられたものを選ぶ」、野菜と果物は「缶詰ではなく、なるべく新鮮な旬なものを選ぶ」とあります。これは「地産地消」の考えであり、「ファーマーズマーケットなどで、地元の農家の人に季節の野菜を教えてもらいましょう」といったアドバイスも記してあります。

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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

 ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJリーグ横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けてのスポーツ食講座なども行う。著書に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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