欧米関係者が驚く「相撲部屋のちゃんこ鍋」 注目したい“アスリート食”としての魅力
Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「欧米が驚く相撲部屋のちゃんこ鍋」について。
公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏の連載、今回は「相撲部屋のちゃんこ鍋」
Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「欧米が驚く相撲部屋のちゃんこ鍋」について。
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「筋力増強を伴わない体重増加は、けがのもと」
「肉だけでなく魚や野菜も食べよう」
「間食や夜食は脂肪の少ないものを食べよう」
こちらは、ある競技の選手に向けた健康指南。いずれもアスリートではない私たちの食生活や体作りにも通じる内容ですが、さて、誰にあてた言葉だと思いますか?
実はこちら、国技館にある相撲教習所に掲げられた「力士健康訓」の一部。そう、相撲の力士に向けた指南なのです。
東京オリンピック開幕が近づいていることもあり、昨年から海外のゲストをスポーツの現場にご案内する機会が増えています。案内する方は欧米のスポーツ栄養事業従事者やスポーツに興味のある方が中心ですが、中でもリクエストが多いのが相撲稽古の見学です。
スポーツ栄養に関わる方は日本食に非常に興味を持っています。そこで、相撲の稽古や取り組みを見学するだけでなく、相撲部屋のちゃんこ(ちゃんこ鍋を中心とした力士の食事)を実際に食していただくことで、国技のユニークさをお伝えしています。今年の1月には、オーストラリア人のスポーツ栄養士が来日。朝稽古の見学後に用意されたちゃんこの献立は、肉・魚・舞茸をたっぷり使ったスープ仕立てのちゃんこ鍋に、おかみさん手作りのローストビーフや椎茸の含め煮、里芋の煮物にマカロニサラダなどでした。
トップアスリートの食事の基本的な考え方は世界共通。「高たんぱく質、高炭水化物。低脂肪でビタミン、ミネラルが豊富なバランスのよい食事」です。実は肉、魚、野菜、キノコ類をたっぷり使うちゃんこ鍋と白飯を中心とした食事は、この条件にピタリと当てはまる料理。スポーツ栄養の先進国といわれるオーストラリアやアメリカのゲストも、特にちゃんこ鍋のバランスのよさ、そして具材や出汁の味付けによって何種類、何十種類もの異なる鍋があることを知ると、皆一様に「アメージング!」と感動します。
彼らが最も驚くのは、「力士たちは、なぜこんなにヘルシーなものを食べて、体を大きくしているのか」ということです。栄養アドバイスをさせていただいている埼玉栄高校の相撲部にアメリカからのゲストを案内した時も、「力士はどうやったらあんなに大きくなるのか? チキンやビーフの大きな塊肉を食べるのか?」と聞かれました。なるほど、“アスリートの食事=肉のステーキ”が当たり前の国からすると、米や鍋を中心としたちゃんこで体を大きくすることなど、想像もつかないようです。