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普及型コミュニケーションアバター「newme」を使用、渡邉拓馬氏が遠隔バスケ教室

元バスケットボール日本代表の渡邉拓馬氏が17日、“ロボット”を介する画期的な方法で福島・会津若松市の子どもたちに遠隔指導を行った。「東北『夢』応援プログラム」の中間発表イベントとして、初めて普及型コミュニケーションアバター「newme(ニューミー)」を遠隔操作。福島出身の同氏と、同市立川南小学校で活動するミニバスケットボールチーム「川南ドルフィンズ」の小学5、6年生の女子選手6人らと交流を図った。

「東北『夢』応援プログラム」に参加したミニバスケットボールチーム「川南ドルフィンズ」の選手たち【写真:東日本大震災復興支援財団】
「東北『夢』応援プログラム」に参加したミニバスケットボールチーム「川南ドルフィンズ」の選手たち【写真:東日本大震災復興支援財団】

コロナ禍の新しいスポーツ指導 元日本代表・渡邉拓馬氏の“ロボットバスケ教室”とは

 元バスケットボール日本代表の渡邉拓馬氏が17日、“ロボット”を介する画期的な方法で福島・会津若松市の子どもたちに遠隔指導を行った。「東北『夢』応援プログラム」の中間発表イベントとして、初めて普及型コミュニケーションアバター「newme(ニューミー)」を遠隔操作。福島出身の同氏と、同市立川南小学校で活動するミニバスケットボールチーム「川南ドルフィンズ」の小学5、6年生の女子選手6人らと交流を図った。

 子どもたちの前に現れたのは、身長150センチになった日本代表だ。4つのローラーがついた土台からアームが伸び、人でいう首の部分にはディスプレイ。画面上には渡邉氏の顔が映し出されていた。都内にいながらパソコンの矢印ボタンを押すだけで前後に移動可能。上下左右に首振りもできるアバターだ。“未来的なコーチ”の登場に子どもたちから驚きまじりの笑い声が漏れた。

 東京と福島。新型コロナウイルスの影響で対面指導ができない状況でも関係ない。ネット上から現地の「newme」にアクセスすれば、自宅にいながらその場所の風景を楽しんだり、コミュニケーションをとったりできる。水族館の展示やショーを見るなど観光目的でも利用可能だ。今回はスポーツ指導に使われ、渡邉氏が「おはようございます! 楽しくやりましょう」と呼び掛けると、子どもたちは戸惑いつつ「よろしくお願いします!」と挨拶。貴重な体験ができる夢の時間が始まった。

 東北「夢」応援プログラムは、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた、年間を通して子どもたちの夢や目標を応援するプログラム。「夢応援マイスター」を務めるアスリートや元アスリートが、参加する子どもたちの掲げる半年後、または1年後の目標に向かって、遠隔指導ツールでサポートする。1日限りのイベントで子どもたちとの交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられる画期的な試みだ。

 10月から始まった渡邉氏と「川南ドルフィンズ」の交流。子どもたちが半年後の目標を掲げ、渡邉氏がサポートしていく。3か月が経った今回は中間発表イベントだ。「この前やった鬼ごっこは覚えてる?」。ディスプレイから飛んできた渡邉氏の問いかけに子どもたちは困惑顔。それでも、ボールを持つとバスケが大好きないつもの姿で駆け回った。

普及型コミュニケーションアバター「newme(ニューミー)」を遠隔操作して指導が行われた【写真:東日本大震災復興支援財団】
普及型コミュニケーションアバター「newme(ニューミー)」を遠隔操作して指導が行われた【写真:東日本大震災復興支援財団】

アバターを介して様々なアドバイス

 最初は変則鬼ごっこによるウォーミングアップ。ボールを持たない鬼が、ドリブルしながら逃げる子を追いかけるものだ。ただし、ともに移動できるのはコート内に書かれたラインの上だけ。鬼は1人だけではないので、逃げる子も広い視野を持ちながらドリブルをして移動しなければならない。「残り1分!」「あと10秒!」。都内のパソコン画面を通じて見守る渡邉氏。カメラはコートを見渡せるほど視野が広く設定され、時折体育館を動きながら声をかけた。

 続いて中間発表の時間。子どもたちはこれまでの遠隔指導で出した課題を入れたメニューにチャレンジした。フリースローを打ち、入ったかどうかにかかわらずリバウンドをキャッチする。続けてフックシュートを放ち、再びリバウンド。最後はバックシュートと打つ。終わったらフリースローラインに戻って初めから繰り返す。40秒間でできるだけ多くの回数をこなしていく。次々とネットを揺らす姿を見た渡邉氏は「OK! ありがとう!」と拍手で応えた。

 次は状況判断を養う練習。フリースローライン上に1メートル間隔で2つのコーンを設置し、2人がオフェンスとディフェンスに分かれる。コーンを挟み、オフェンスはリングを背にしたディフェンスと対面。ボールを受け取った瞬間、ディフェンスがコーンの右か左に移動してチェックをかける。オフェンスは相手の動きの逆をついてドリブルを始め、レイアップシュートまで持って行く。相手がコーンの間に立ってブロックに来た場合はその場でシュートだ。

 相手を見て瞬時に動かなければならない。渡邉氏は、アバターを通じて現地のスタッフに練習方法を伝授。子どもたちが慣れてくると、レイアップではなくジャンプシュートに変えて練習のバリエーションを増やした。「ディフェンスはフェイクを入れてもいいからね」。対戦形式のメニューで盛り上がると、子どもたちだけでなく、見守る保護者からも笑い声が響いた。

「シュートで両手を使えるようにするのも当たり前だけど、足も両方使えるようにしていきましょう。課題でわからないことがあったら(遠隔指導ツールを使って)これからコメントしてきてくださいね」

 助言を送りながら、小まめに水分補給の時間をとって練習。渡邉氏もアバターの操作に慣れてきた。練習を終えると、今度は質問タイム。恥ずかしそうな子どもたちに代わって現地のスタッフが「声を出すにはどうしたらいいですか」と問いかけた。渡邉氏は「仲間同士で試合中に声が出ていればいいと思います。バスケットに限らず、普段からみんなで遊べば自然と声が出るんじゃないかな。どんどん遊んだらいいと思う」とアドバイスした。

「川南ドルフィンズ」はコロナ禍もあり、昨年は4月から4か月間の活動自粛を強いられた。子どもたちは外で遊ぶこともできず、バスケットボールへの思いを募らせる日々。活動再開後も3密を避けるため、男女別のスケジュールで練習を実施するなど工夫してきた。

渡邉拓馬氏は東京から熱心に選手たちを遠隔指導をした【写真:編集部】
渡邉拓馬氏は東京から熱心に選手たちを遠隔指導をした【写真:編集部】

参加選手も感謝「コロナ禍でも拓馬選手と一緒に練習できてよかった」

 1時間ちょっとに渡った楽しいひと時はあっという間に過ぎていった。クリニックを終えると、子どもたちは感想を発表。近づいてくるアバターの渡邉氏に恥ずかしがりながらも「シュートが苦手なので、もっと練習していきたい」「コロナウイルスが流行っている中で拓馬選手と一緒に練習できてよかった」「オンラインだけどいろんなことが学べたのでそれを生かしてトレーニングしたい」などと振り返った。

 渡邉氏も一つ一つ丁寧にアドバイス。「みんなシュートまで片手で行くことが多いけど、シュートを打つまで両手で保持していいからね」「また落ち着いたらそちらに行きますね」「フックシュートは本数を打って、友達と今みたいにゲーム形式でやれば飽きないと思うので、焦らず楽しみながらやりましょう」と優しく返答した。

 最後は閉会式。残り3か月のプログラムに向けて、元日本代表から心を込めたエールが送られた。

「今日は慣れないオンラインでのイベントでしたが、しっかり聞きながら実行してくれてありがとうございました。残り3か月でやれることは限られていますが、僕の出す課題に対して何も考えずにやるのではなく、試合で使いたいスキルや、試合でどうやったら勝てるのかなど考えながらやってほしいと思います。そうしたら自分に返ってくる課題も変わってくるので、バスケットボール以外でも生かしてもらえたら。これからまた楽しみながら頑張っていきましょう」

 体育館は大きな拍手に包まれた。イベント終了後、アバターの渡邉氏を中心に記念撮影。集合写真でひょっこり写るアバターに子どもたちもニコニコと笑顔を浮かべた。一人ひとりと2ショットも撮影。画面上の渡邉氏は「肩を組んでもいいよ」と呼び掛けるなど、ソーシャルディスタンスを気にする必要なく楽しんだ。

「newme」などを使った新しい形が広がれば、レベルの高い指導をどこにいても受けられる時代が来るかもしれない。半年間に渡って行われる遠隔指導ツールを通じた渡邉氏と子どもたちの交流。3月の成果発表まで多くを学び、確かな成長を見せてくれるはずだ。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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