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「生理が止まったら練習できている証拠と…」 未だ「ピル=避妊」と理解進まぬ日本にメダリストの警鐘――マラソン・有森裕子

スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

五輪2大会連続メダルを獲得した有森裕子さんの今、そしてマラソンが人を育てると思うこととは【写真:荒川祐史】
五輪2大会連続メダルを獲得した有森裕子さんの今、そしてマラソンが人を育てると思うこととは【写真:荒川祐史】

「シン・オリンピックのミカタ」#100 連載「あのオリンピック選手は今」第7回・後編

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

 五輪はこれまで数々の名場面を生んできた。日本人の記憶に今も深く刻まれるメダル獲得の瞬間や名言の主人公となったアスリートたちは、その後どのようなキャリアを歩んできたのか。連載「あのオリンピック選手は今」第7回は、女子マラソンで1992年バルセロナ五輪で銀メダル、96年アトランタ五輪で銅メダルを獲得した有森裕子。現役を退いてから17年の歳月が流れたが、市民ランナーの姿を見て改めてマラソンの力を感じることが多いという。女性アスリートの健康課題の発信にも取り組む今、自らが人生を懸けた競技には、人が生きるためのすべてが詰まっていると力説する。(前後編の後編、取材・文=佐藤 俊)

 ◇ ◇ ◇

 1996年のアトランタ五輪で銅メダルを獲得した後、有森裕子はプロランナーとして活動していくことを決めた。99年のボストンマラソンで3位に入賞し、自己ベスト(2時間26分39秒)を更新も、2000年シドニー五輪出場は叶わず。その後は01年ゴールドコーストマラソンで優勝するなど結果も残したが、休養期間を経て07年東京マラソンを最後に現役を引退した。

「プロとしてマラソンを走り、賞金をもらって生活費や関わってくれた人にお金を払った時は、すごく充実していました。同じ頃、スポーツマネジメント会社を立ち上げ、講演などの仕事をしたり、かなり忙しくなってきて、仕事と自分の生活のメリハリがつかなくなってきたんです。競技をやることがいつも自分の中心にあったんですけど、仕事が上手くいかないと、競技をやっているからと逃げに使い始めてしまった。マラソンは仕事。2時間25分を切れないレベルなら仕事にならない。それならやらないほうがいいと思い、引退を決めました」

 いったん仕事を軌道に乗せた後、競技に戻れればという考えもあった。だが、その頃には競技者として五輪を目指すこと、自己ベストを更新することがイメージできなくなっていた。引退に迷いはなく、マラソンへの未練も寂しさも、まったく感じなかった。

「引退してから『走りたくなりませんか?』ってよく聞かれるんですけど、全然(笑)。だって、私にとってマラソンは好きでも嫌いでもなく、生きていくための手段であり、仕事だったんですから。それを別のものに切り替えただけなので、“ロス”とかはまったくなかったです」

 現役引退後、有森は会社の経営や国連人口基金親善大使、認定NPO法人ハート・オブ・ゴールド代表理事、さらに講演会など精力的に活動した。オリンピアンでメダリスト、知名度も抜群で、いろいろなところから声がかかり取り組んできたが、その一つがUNIVAS(一般社団法人大学スポーツ協会)の活動に副会長として参加したことだ。

「今、私はUNIVASで学生の人材育成をメインにしています。大学には、これからの社会や教育を担う人材がいるんです。その人材をスポーツを通して前向きに育成したり、私からも学生や女性に向けて発信するようにしています」

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佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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