スポーツ名門校か、地元公立校か 神野大地が潰れるリスクを覚悟し、貫いた高校選び
クラスメートから受けた刺激、スポーツ強豪校の恩恵「目標が変わった」
「中学までは、平日は陸上部で土日はクラブチームで野球をやる生活。陸上について専門的なことを教えてもらえる機会がなかったけど、高校で小田監督と出会い、専門的な知識、技術を教えてもらうことで、どんどん力を伸ばすことができた。強豪校に進んで潰れてしまうマイナスより得られるプラスが大きかった」
スポーツ強豪校の場合、卒業後の進路においても得られる恩恵もあったと感じている。
「仮にトップになれなくても5番手、10番手でも関東の大学に行ける可能性は広がる。高校には駅伝もあるけど、基本的に陸上は自分との戦い。自分自身のレベルアップが大事になる。だから、周りがめちゃくちゃ強くても自分も強くなればいい。そうしたら、もしかしたら大学で勝負できるようになるかもしれない。
でも、潰れてしまうリスクを恐れて公立高校、弱いチームに行こうという考えでは得られるものを逃すかもしれない。人生の節目、節目ではマイナスよりプラスの要素を強く思えるのなら、そっちに進んでいく方がいいと思う。挑戦した結果ダメだったとしても失敗じゃない。経験になるし、次の挑戦に生きてくるので」
振り返ってみると、スポーツ強豪校ならではのメリットもあった。中京大中京は野球、サッカー、水泳、フィギュア、陸上の5競技に力を入れており、いずれも全国的強豪だ。多くの選手が部活の垣根を越え、スポーツクラスに入る。神野は中学時代の実績は乏しかったが、同じ代の陸上部が少なかったことで「奇跡的に」入れたという。
「周りは野球とかサッカーとかで中学日本代表を経験したような選手ばかり。そういう選手たちとクラスメートとして、常に一緒にいることで自分自身が目指す目標も変わった。練習に対する熱意、気持ちの入れ方を学べる部分も大きかったし、彼らと同等になりたいという気持ちが芽生えた。スポーツクラスに入れたことは大きかった。
中学時代は箱根駅伝なんて夢のまた夢だったし、まさか自分が関東の大学なんて……というレベルの選手。最初は中京大に内部進学できることもあり、親からOKをもらえた。でも、そういう環境で関東の大学に行きたいと思い、頑張って成果が出て、少しずつ目標が大きくなり、いつの間にか箱根駅伝が夢ではなく目標に変わっていた」
神野は自らを「陸上選手としての才能はなかった」と言う。だからこそ、才能に恵まれた選手にどうすれば勝てるかを考え、練習から周りより1本でも多く、1キロでも多く自分を追い込むことで戦える選手になった。そんな競技人生で支えになっているのは、青学大を箱根駅伝4連覇に導いた原晋監督が説いた「半歩先の目標設定」だ。