アスリートを悩ませる引退後の人生 杉山愛は「100のやりたいこと」をノートに書いた
今も続けるウィッシュリスト「50個叶えたら50個追加する作業を続けています」
「長年、プロとしてプレーしてきたことを誇りに思うし、得難い経験もたくさんしたので、過去の選択に悔いはありません。でも、書き出したことで出産にはタイムリミットがあると自覚できたし、10年間は仕事よりもプライベートを優先しようというマインドセットできました。
もちろん、書き出したからといって、実現できないものもあります。でも、立ち止まって考える時間を持たないと、目の前のことに手いっぱいで、時間だけが過ぎていく。リストアップすると、意外と自分の人生を俯瞰して見られます。すると、人生のプライオリティが明確になり、仕事のやり方や捉え方も変わってきたりする。そこが重要な気がします」
結婚、出産を経て、大学院に進学。2年間、家庭、仕事、学業を両立させながら、2017年3月に卒業した。これもウィッシュリストにあった一つ。
「院に進んだのは指導者になるための学び。卒業した翌月から指導の仕事をスタートし、今ではコートに立つ機会も増えました。ウィッシュリストは今でも、50個叶えたらまた50個追加する作業を続けていますよ」
一呼吸置きたい、と言っていたが、結局、常にフル回転しているように見える。
「確かに(笑)。忙しさは変わらないので、ワークライフバランス、心身のバランスは常にとっていく必要があるのは相変わらずです。でも、声を掛けていただけるのは有難い。職種も分野も様々な仕事をしていますが、楽しいですね、今は!」
◇杉山 愛(すぎやま・あい)
1975年7月5日、神奈川県出身。4歳でテニスを始める。15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位を獲得し、17歳でプロに転向。シングルス492勝(優勝6度)、ダブルス566勝(優勝38度)、4大大会のダブルス優勝4回。ダブルスでは世界ランク1位に輝き、日本を代表するプロテニスプレーヤーとして一時代を築いた。2009年、34歳で現役を引退。その後、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科にて修士課程を修了。現在、スポーツコメンテーター、後進の育成事業を手掛けるなど、多方面で活躍する。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)