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「練習もチャリもバスもずっと1人で」 孤独な高校生だった羽根田卓也が得た人生の財産

メダルに届かずとも、東京五輪にかけて戦ったアスリートにスポットを当てた「THE ANSWER」の連載「東京五輪 もう一つのストーリー」に登場したカヌーの羽根田卓也(ミキハウス)。インタビューではもう一つ、次世代のアスリートと子供たちに向けたメッセージを送ってくれた。10代で単身スロバキアに渡り、日本ではマイナー競技であるカヌーを一人で背負って2008年北京から五輪4大会に出場したパイオニア。挑戦の連続だったキャリアを振り返り、人生の選択における軸とともに、後輩アスリートに対しての想いを明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

羽根田卓也が子供たちに伝える「挑戦と選択」の大切さ【写真:近藤俊哉】
羽根田卓也が子供たちに伝える「挑戦と選択」の大切さ【写真:近藤俊哉】

カヌー界のパイオニアが子供たちに伝える、人生の「挑戦と選択」の大切さ

 メダルに届かずとも、東京五輪にかけて戦ったアスリートにスポットを当てた「THE ANSWER」の連載「東京五輪 もう一つのストーリー」に登場したカヌーの羽根田卓也(ミキハウス)。インタビューではもう一つ、次世代のアスリートと子供たちに向けたメッセージを送ってくれた。10代で単身スロバキアに渡り、日本ではマイナー競技であるカヌーを一人で背負って2008年北京から五輪4大会に出場したパイオニア。挑戦の連続だったキャリアを振り返り、人生の選択における軸とともに、後輩アスリートに対しての想いを明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

 羽根田卓也ほど、道なき道を歩いてきたアスリートはいない。

 元カヌー選手だった父の影響で、9歳から競技を始めた。スラロームコースがなかった日本を18歳で飛び出し、強豪スロバキアに単身渡った。現地で大学と大学院を卒業し、ロンドン五輪出場以降は競技を続けるためにスポンサー獲得を目指し、企業に手紙を送って一人でプレゼンも繰り返した。

21歳で出場した北京五輪から4大会連続出場を果たした【写真:Getty Images】
21歳で出場した北京五輪から4大会連続出場を果たした【写真:Getty Images】

 2つの道が目の前にある時、羽根田の選択の軸は至ってシンプル。「どちらが自分をより成長させてくれるか」だ。

「高校はカヌー部のある男子校に行き、3年間、一生懸命に没頭して。高校を卒業して、どうしようとなった。日本の大学に行って今までと同じ環境でやるか、それともヨーロッパに行くか。それでヨーロッパで3年間やって、北京五輪が終わると、今度は大学に行かないといけない。日本の大学に行くか、スロバキアの大学に行くか。そういう中でいくつも選択の機会はありました」

 そう言って、重たい言葉をサラリと口にする。「その節目ごとに選択する時、どちらに行くべきか、本人は分かっていると思うんですよね」と。

「選択すべき道に、しっかりと目を向けられるか。自分のためになる選択がどちらかは本当は心の底で分かっている。分かっているのに、選べない人がやっぱりいる。耳が痛い、目が痛いことこそ、自分のためになることだと僕は思います。そういう時、できるだけ自分の心に目を向けて、耳を傾けて、自分には何が必要かを見極める。そうやってスロバキアも大学行きも決めました」

 きっと、この道が正しい。なんとなく、そんな予感がする。でも、周りは反対する。そもそも前例がない。厳しい未来が想像できる。そんな理由で、躊躇してしまい、足を一歩踏み出せない。あるいは、もう一つの道を選んでしまう。多くの人がそうやって悩み、踏ん切りがつけられない。

 しかし、羽根田は「自分はそういう厳しい道を選択した方が、結局、気持ちが楽なんです」と言い切る。

「優しい道に行くと、心の中に後ろめたさ、くすぶっている感じが絶対ある。でも厳しい道は踏ん張れば、それだけ毎日に充実感があるし、何か達成した時に涙が出るくらい嬉しい。それが人生の喜びだと思います。人間は自己を鍛えてナンボかな、と。自分を甘やかして幸せはきっとないんじゃないか。時には慰め、逃げ道を作ることも当然大事。ただ、少し厳しい言い方ですが、自分を鍛えることからは逃げられないと、僕は生きてきました」

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