陸上で日本一、冬季五輪も出場 「勝てる場所で勝つ」競技転向で夢を叶えた男の思考
競技転向を悩む選手、指導者への助言「その子が違うジャンルで成長する瞬間かも」
悩んでいる選手から相談があれば、本人がきっかけを持っているので話しやすい。一方、相談せずに悩み続けている選手には、最初は少し冗談っぽく声をかけ、アプローチの仕方を変えてみる。
「こちらから見て本当に転向した方がいいと思っていても、『これどうなの?』と言って『そりゃないっすね』と本人の気持ちが100%なしの状態なら、無理やりやらせることはありません。『そうですかね?』と可能性が見えたら、少し強く推して『やってみようか』という話になります」
決して強制はしないが、好きだった種目から離れ、後ろ向きの気持ちのまま取り組む選手もいる。そんな時はその日最もきつい練習をしている選手から声をかけたり、一緒に走ったりして気持ちを上げさせるという。
陸上に関わらず様々な競技で伸び悩み、転向を迷う選手がいる。そんな時、佐藤氏は「今の専門外の競技に興味を持ったのであれば、よく調べてみてほしい」と願う。各競技を管轄しているのは協会や連盟。過去の事例などを問い合わせれば「意外と教えてくれることもあるんですよ」という。
「そうすると『今度、練習会に来てみないか?』ということもあるかもしれません。特にマイナー競技に関しては、競技団体に直接聞くのはいいこと。むしろそうやって人と直接繋がって情報を得てほしい。意外と窓口はオープンです」
さらに指導者へのアドバイスも送ってくれた。
「種目転向をしてみたいという子のエネルギーが凄く強ければ、やらせてあげることが大事だと思います。最終的に指導者がやらせるか、やらせないかを決めるものではない。本人が先生を頼りにするのであれば、その子の適性を見極めながら『今はこの子が違うジャンルで成長する瞬間なんだな』と背中を押していただきたいなと思います。
もし失敗して帰ってきたら、また入れてあげればいい。失敗して『戻ってきちゃダメ』ではなく、『経験を今度はみんなに教えてあげて』と。そうすれば、もの凄く競技の幅が広がるのではないかなと思います。スポーツのインターンシップのような形で、いろいろな種目でいろいろなトレーニングを教わって。ちょっと失敗しても、おそらく人間的には成長していると思います」
適正探しを手伝ってあげることも指導者の役目。そうすれば一人でも多くの選手が「勝てる場所」を見つけ、「好き」を得られるきっかけになるはずだ。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)