22歳で戦力外通告、3日後にもう就活 元ロッテ選手がこんなに潔く現役を諦められた理由
選手には「ユニホームの間はとことん野球に向き合ってほしい」
ちょうどその頃、事務局からも誘いを受けていた。ここでなら、就職活動で生まれた気持ちを形にできる――。選手としての経験も必ず活きると確信し、第二の人生のスタート地点を決めた。
プロ野球選手である以上、いつか必ず引退の時は来る。事務局の立場からすれば、現役選手にもセカンドキャリアについて日頃から考えておいてほしいと願うのは自然だ。ただ、肘井さんは「ユニホームを着ている間はとことん野球に向き合ってほしいです」と語る。
「すっきりしないと次に進めないと思うんです。お腹いっぱいだから店を出られるわけで、お腹空いてたら注文するじゃないですか。『もういいや、やり切った』と思わないと次のステージの成功はないと思う。『あの時、こうしておけばよかった』と思うのが終わった直後なのか、5年後なのかは分からないけれど、そういうことをちょっとでも減らしてほしい」
野球と向き合い、きちんと消化できているOBは、充実したセカンドキャリアを送っている人が多いと感じている。消化に至るのは、プロを辞めてすぐの場合もあれば、独立リーグでのプレーや球団の裏方を介しての場合もあるが、肘井さんは現役最終年を全うできたから、スムーズに次のステップに移ることができている。
今、胸に秘めているのは選手時代に掲げていた目標よりも、壮大な思いだ。
「高校生が文句なしでプロ入りできる世界にしたいですね。例えば、大学とプロを迷うというのは、プロの魅力がそれだけのものなのかなと思いますし……もちろん、大学進学も大事ですが、天秤にかけられていること自体は悲しいこと。プロになったからこういう仕事に就けました、という世界にしないといけないですし、大学の4年間よりプロの4年間の方が価値あるものと思わせないといけない。めちゃくちゃ壮大ですけど、それが目標です」
プロ入り前の選手、引退という現実に直面する選手の不安を少しでも取り除くことが、ひいては野球界の発展につながると信じている。1か月半の就職活動で芽生えた思いを忘れず、あらゆる形でのサポートを続けていく。
■肘井竜蔵(ひじい・りゅうぞう)/日本プロ野球選手会事務局職員
1995年11月13日、兵庫県出身。北条高では甲子園出場なしも、強肩強打の捕手として通算46本塁打をマーク。13年育成ドラフト1位でロッテに入団。プロ2年目の15年3月に支配下選手登録され、同年の開幕1軍入り。4月2日の日本ハム戦でプロ初安打、初打点をマークした。16年にファームでサイクル安打を達成、17年には1軍で自己最多となる18試合に出場するも、翌18年10月に戦力外通告を受け現役引退。19年1月に日本プロ野球選手会事務局に入局した。現役時代の身長・体重は182センチ、88キロ。右投左打。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)