22歳で戦力外通告、3日後にもう就活 元ロッテ選手がこんなに潔く現役を諦められた理由
日本におけるプロスポーツの先駆けであり、長い歴史と人気を誇るプロ野球。数億円の年俸を稼ぎ、華やかにスポットライトを浴びる選手もいる一方、戦力外通告を受けて現役生活に終止符を打ち、次のステージで活躍する「元プロ野球選手」も多くいる。
連載「Restart――戦力外通告からの再出発」第1回、元ロッテ肘井竜蔵は選手会で奮闘中
日本におけるプロスポーツの先駆けであり、長い歴史と人気を誇るプロ野球。数億円の年俸を稼ぎ、華やかにスポットライトを浴びる選手もいる一方、戦力外通告を受けて現役生活に終止符を打ち、次のステージで活躍する「元プロ野球選手」も多くいる。
そんな彼らのセカンドキャリアに注目し、第二の人生で奮闘する球界OBにスポットライトを当てる「THE ANSWER」の連載「Restart――戦力外通告からの再出発」をスタート。第1回は2013年の育成ドラフト1位でロッテに入団し、現在は日本プロ野球選手会事務局で活躍する25歳・肘井竜蔵さん。
入団2年目の19歳で支配下契約、開幕1軍入りするなど順調なプロ生活を歩んでいたが、5年目の22歳で戦力外通告を受けた。大卒なら社会人1年目という年代。通告から3日後に就職活動を始め、現役への未練なく、選手会の“中の人”への転身を決断できた理由とは――。
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ロッテで将来の和製大砲として期待されていた肘井さんは今、東京・日本橋にオフィスを構える日本プロ野球選手会事務局に勤め、現役選手や引退したOBの活動を支えている。きっちり整えられた髪型にスーツ姿で「僕も名刺を持つようになってたんですよ」と爽やかに挨拶をしてくれた。
日本プロ野球選手会は、NPB12球団に所属する日本人選手全てと一部の外国人選手が会員となっている団体。40年以上の歴史があり、一般社団法人、労働組合の2つの選手会が併存しており、現在は一般社団法人の理事長をソフトバンク・松田宣浩、労働組合の会長を巨人・炭谷銀仁朗が務める。
選手寿命も短く、社会保障も不十分であることなどの問題を受け、主に選手の地位向上を目的として設立されたのが始まりだ。現在は選手の地位向上に関する問題へのみならず、全国各地での野球教室や各種チャリティなど公益的な活動も精力的に取り組んでいる。
肘井さんは事務局にとって10年ぶりの“新人”として19年1月に入局した。5人いる職員の中では最年少。仕事は球団交渉、事務折衝、普及活動など多岐にわたるが、力を入れている事業の1つがセカンドキャリア支援だ。
プロ野球ではシーズン最終盤、球団が来季の契約を結ばない選手にその旨を伝える「戦力外通告」期間が定められている。1軍の試合に出場できない「育成選手」として契約を結び、同じ球団に残るケースもあるが、通告を受けた選手は現役続行のため他球団に移籍する、もしくは引退して別の仕事に就くことがほとんどだ。
事務局は数年前から、戦力外通告を受けた選手には個別に電話連絡することを始めた。引退を考えている選手には、様々な方面で活躍する球界出身のOBを招き、実体験などを語ってもらう退団者向け研修会への参加を案内するほか、転職サービスを提供する企業との橋渡しも行う。
「転職活動は本来、前向きなもの」と話す肘井さんたちは、引退した選手が充実した第二の人生を歩めるよう、進路の選択肢を増やすことを目指している。大学進学などの情報提供も行っており、昨年の戦力外選手では元ロッテの島孝明さん、元広島の岡林飛翔さんがセカンドキャリア特別選考を利用して國學院大に進学している。