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ダルビッシュも認めた 25歳の元早実エース、「107日間の米挑戦」で決めた第二の人生

大企業のサラリーマンを辞め、右腕一本で米国に挑戦した男が、新たな一歩を踏み出した。差し出された名刺には「Pitching Strategist」とある。「まだまだ始まったばかりですけど、自分がやりたいと思っていたこと。自信はあります」と笑った視線は、第二の人生を捉えていた。内田聖人、25歳。春に野球界でにわかに脚光を浴びた挑戦は、意外な結末を迎えていた。

自身が代表を務める「NEOLAB」のロゴを手に米挑戦を振り返った内田聖人【写真:編集部】
自身が代表を務める「NEOLAB」のロゴを手に米挑戦を振り返った内田聖人【写真:編集部】

天然ガス営業マンから米独立リーグに挑戦し話題を呼んだ内田聖人、その後のすべて

 大企業のサラリーマンを辞め、右腕一本で米国に挑戦した男が、新たな一歩を踏み出した。差し出された名刺には「Pitching Strategist」とある。「まだまだ始まったばかりですけど、自分がやりたいと思っていたこと。自信はあります」と笑った視線は、第二の人生を捉えていた。内田聖人、25歳。春に野球界でにわかに脚光を浴びた挑戦は、意外な結末を迎えていた。

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 まずは、その経歴を改めて紹介したい。

 静岡・伊東市出身。伊東シニア時代に日本代表に選ばれ、東京の名門・早実に進学。2年夏の甲子園に出場し、聖地のマウンドを踏むと、3年夏は伝統のエースナンバー「1」を背負い、「斎藤佑樹2世」とも言われた。西東京大会決勝で後に甲子園を制覇する日大三と対戦。1-2で敗れこそしたものの、高山俊(現阪神)、横尾俊建(現日本ハム)らを擁する強力打線を9回2失点に抑えた。

「大卒プロ入り」を掲げ、進学した早大1年春からリーグ戦に登板し、最速150キロを記録。一躍、プロのスカウト陣の注目を浴びた。順風満帆な日々だったが、3年当時に右肘痛を発症。以降は思うように投げられず、社会人のJX-ENEOS入り。再起を期したが、ようやく感覚を取り戻し、手応えを感じ始めた2年目の17年オフに戦力外通告。野球の道を断たれ、社業に専念することになった。

 しかし、ユニホームを脱いでも白球を置くことはなかった。「本当の最後の最後になって、いい感覚に少しずつ戻っていた」。天然ガスの営業マンとして働く傍ら、勤務後や出張先で練習を一人続けた。懸命な努力で全盛期を彷彿とさせる球速を取り戻し、復活を実感。「もう一度だけ、チャレンジしたい」。19年2月、有給休暇を使って米トライアウトに挑戦し、合格を掴み取った。

 入団したのは、2Aレベルといわれる強豪独立リーグ・キャナムリーグのニュージャージー・ジャッカルズ。安定した大企業を辞め、MLB、NPBに成り上がるという大志とともに6月1日、太平洋を渡った。春に伝えられていたのは、ここまで。その先に待っていた展開は、どんなものだったのか――。野球の本場で過ごした激動の107日間を振り返り、内田は少し懐かしそうに語り始めた。

「リーグ自体はMLB、マイナーの経験者が多く、若くてギラギラしているというより、上手い堅実な野球をする。チームメートに元メジャーは2人いたし、それ以外もマイナー組織を経験した選手ばかり。ユニホームを着て、グラウンドに立つのも1年半ぶりだったし、米国のエンジョイする野球の雰囲気も日本とは違った。そんな空気感を体験できることを含め、本当に楽しかったです」

 しかし、待っていた結末はあまりに残酷だった。チームに合流して、ほどなく「明日からロースターに入る」と告げられた。いよいよ迎えるデビューの時。ただ、おかしかったのは翌日だった。その日も「明日から」に先延ばしされると、また翌日も「明日から」と繰り返され、一向に待っていた「明日」が来ない。そんな日々が10日間ほど続いて、やっとロースター入りが実現した。

 毎日、「明日」にも来るかもしれない登板に備えた結果、強度の高い投げ込みができなかった。気づけば、結果的に2週間ほど、本格的な投球から遠ざかった。そんな状態で迎えた13日の初登板。フォームがバラバラでコースも定まらない。救援登板で四球に失策が絡んで失点が重なり、20日の2戦目も思うように抑えることができず。数日後、試合終わりにコーチから呼び出された。

「もうリリースするから。荷物をまとめてくれ」――。

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