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ヘビー級最強は誰だ!? フューリーはワイルダーと再戦へ、ビッグマッチが続々実現

“タイソン・フューリーの圧勝”という戦前の予想を覆し、激しく、スリリングで、劇的なファイトになった。試合後、勝者、敗者の両方が新たなリスペクトを勝ち得たという意味で、敗者なき戦いでもあった。

タイソン・フューリー【写真:Getty Images】
タイソン・フューリー【写真:Getty Images】

フューリーが流血しながらも判定で完勝、ワイルダーとの再戦に前進

“タイソン・フューリーの圧勝”という戦前の予想を覆し、激しく、スリリングで、劇的なファイトになった。試合後、勝者、敗者の両方が新たなリスペクトを勝ち得たという意味で、敗者なき戦いでもあった。

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 9月14日、ラスベガスのT-モバイルアリーナで行われたヘビー級12回戦で、前統一王者のタイソン・フューリー(イギリス)が、この日まで20戦全勝(13KO)だったオットー・ワリン(スウェーデン)に3-0(116-112、117-111、118-110)の判定勝ち。フューリーは戦績を29戦29勝(20KO)1分に延ばし、来年2月に予定されるWBC世界ヘビー級王座デオンテイ・ワイルダー(米国)との再戦に大きく前進した。

 ただ、冒頭で述べた通り、楽な試合ではなかった。

「(3回に)目をカットしたことで試合は完全に変わった。目で見えなかったし、頭も何度もぶつかった」

 フューリーがそう振り返った通り、3回途中、ワリンの左を浴びた元王者は右目の上から激しく出血。以降は傷を気にしながらの戦いを余儀なくされた。

 カットは相手の加撃によるものだったため、続行不能と判断された場合にはTKO負けというピンチ。中盤ごろまでに出血はかなり酷くなり、通常であればストップされてしかるべきと思えたほど。その時点では、数千万ドルの報酬が望めるワイルダー戦の消滅がフューリーの目の前にちらついたのではなかったか。

 しかし、その後のフューリーのアジャストメントは、無敗の元王者の誇りを感じさせるのに十分なものではあった。後半の英国人は猛然と前に出て、ロープ際で渾身の左右を叩きつけ、体格差を生かして相手にのしかかる。普段はスタイリッシュなアウトボクシングが信条のフューリーが、出血で視界を奪われ、必要に迫られて敢行したなりふり構わぬインファイトだった。

「(勝因は)ハートと決意だ。私は戦える限り、戦い続ける。アゴにもボディにもパンチを決めたが、(ワリンは)それでも前に出てきた。彼は無敗だけど、今夜は私が上だった」

 最終回にワリンの左を浴びてフラフラになるピンチもしのいだフューリーは、試合後にはそう勝ち誇った。28歳のスウェーデン人のタフネスゆえにKOは逃したが、判定は文句なし。予想外の苦戦は、引き出しの多さを証明する舞台になった。この日は序盤から本調子には見えなかったが、これまでと違うスタイルでの勝利で底力を誇示したとも言えるのだろう。

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杉浦 大介

1975年、東京都生まれ。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、ボクシング、MLB、NBAなどを題材に執筆活動を行う。主な著書に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)、「イチローがいた幸せ」(悟空出版)。

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