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壁は頭で登る? 偏差値70の秀才クライマー緒方良行の思考「勉強していてよかった」

緒方はライバル選手にもパワーを驚かれる【写真:松橋晶子】
緒方はライバル選手にもパワーを驚かれる【写真:松橋晶子】

筋肉は頭で強化、英語で海外選手の価値観吸収「勉強しておいてよかった」

 身長172センチと小柄だが、ライバル選手にもパワーを驚かれる緒方。フィジカル強化に欠かせないのは、単純な筋トレだけではない。効率よく筋肉をつけていく方法を独学で勉強。メニューを細かくノートに記し、どんな動作を何回やればクライミングに必要な筋肉を得られるかなどを数値化させているという。

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「そういう組み立ては周りの選手はあまりやっていないけど、自分はオフシーズンに結構やります。例えば、普通に鉄棒で懸垂をやったら何回もできてしまうので、少し持ちづらいところでやる。片手懸垂を(1セットに)MAXで5回できるとするなら、僕の場合は大体それを3セット。3回、3回、3回に設定しておけば、大体は3回、2回、2回しかできずに終わるんですよ。

 それが3セットとも3回できるようになるまで繰り返す。できるようになったら次は4回、4回、4回に設定しておけば、それをやろうとした時に4回、4回、3回になる。大体予想はできるので、そういう風に組み立てていますね」

 たまに「もっといける」と思っても、「予想していたせいでパワーが出ない」と事前の計算にあえて寄せてしまうことも。“計算ミス”に苦笑いするが、石を掴む力が強くなり、ルートの選択肢が増えた。優勝した6月のW杯では、他の選手が登れなかった強い傾斜をものともせず「自分のフィジカルの強さを見せつけられたかな」と成果を実感した。

 得意科目は数学だが、「当時、勉強しておいてよかった」と振り返るのは英語だ。高校時代は会話まではできなかったが、海外遠征の多い競技のため、学んだ知識を実践する機会が多い。日常会話を話せるようになると、外国人選手の価値観に触れることができた。

「日本人の考え方は結構偏っている。海外の選手のことを聞くと『日本人はなんでそんなに真面目なんだ? なんでそんなに緊張しているんだ?』とよく言われる。僕もどちらかというと、ヨーロッパ選手の考え方の方がパフォーマンスを発揮しやすかった。海外の選手に聞けてよかった」

 最近の活躍の裏には、メンタルコントロールの上達がある。類まれな頭脳を持っても「計画しすぎちゃう癖があるので、それはきっぱりやめました」と、試合で壁を前にした時は思考を止める。以前は東京五輪、世界選手権と大きな大会から逆算し「ずっと先のことばっかり考えていた」と目の前の一本に集中しきれなかった。

「そうじゃなくて『今は今』というのをずっと意識している。やっぱり先のことばかり考えちゃうとなかなか楽しめない。『失敗したらどうしよう』とかネガティブになっていくので、今は楽しむことばかり考える。今のやり方が合っているかなと思います。単純にその大会を楽しむ。今はもっと目の前のことに集中しようとしている」

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