「とことん自分らしく燃え尽きて」 名ウインガー石川直宏を突き動かした葛藤
2009年には15ゴールと得点能力も開眼、爆発力を秘めているからこその意外性
転機は横浜F・マリノスのユース時代。トップ下には天才肌のMF大橋正博が君臨していたので、サイドにポジションを移しパスの受け手に立場が変わった。「そのうちにマークする相手を一瞬で置き去りにする快感を覚えた」そうである。
希少価値の高いウインガーは、ちょうどピッチを幅広く使う原監督率いるFC東京のスタイルにフィットした。
一方で2009年(城福浩監督時代)には、15ゴールを記録して得点能力も開眼。日本代表にも選出されている。
「シュートの技術は、FWの出身の原監督から教えてもらいました。でも当時はシュートを打ちたくても、そこにいなかったし、そこに入っていくまでにパワーを使い過ぎていた。ゴールが増えたのは、プレーエリアが近づき、トラップしたらすぐに打てるようになったのが大きかったですね」
爆発力を秘めているからこその意外性、さらには不安定さも含めて魅力だったが、看板選手だけに冒頭のような悩みもあった。
「面白いサッカーをしながら、やはり喜んでもらうためには結果も必要になる。年齢的にも、自分でガンガン行くより、少し周りを活かしながらと考えた時期もありました。でもやっぱりとことん自分らしく燃え尽きて、と願う気持ちの方が強くなりました」
そんな石川も、8月2日に今季限りでの現役引退を表明。痛快な選手生活も最終コーナーを回った。
【了】
加部究●文 text by Kiwamu Kabe