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なぜ、村田諒太は完敗から激変できたのか “魂の豪打”の裏に勇気と「半歩前」の徹底

ボクシングのWBA世界ミドル級タイトルマッチが、12日にエディオンアリーナ大阪で行われ、前王者・村田諒太(帝拳)が世界王座奪還に成功した。王者ロブ・ブラント(米国)に2回2分34秒TKO勝ち。昨年10月に米ラスベガスで行われた世界戦で、王者だった村田は大差判定負けで挑戦者ブラントを相手に王座陥落したが、9か月ぶりの再戦で見事リベンジに成功。試合後、世界王座返り咲きまでの道のりを振り返った帝拳ジム・本田明彦会長の言葉に、戦前の不利予想を覆せた要因が隠されていた。

WBA世界ミドル級世界王座奪還に成功した村田諒太【写真:Getty Images】
WBA世界ミドル級世界王座奪還に成功した村田諒太【写真:Getty Images】

王座奪還への9か月の歩みを帝拳ジム・本田会長が明かす「村田の凄さ」

 人は短期間でここまで変われるのか――。重圧、弱点、苦手意識、9か月前の悪夢。全ての負の要素を吹き飛ばせたのはなぜだろう。

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 ボクシングのWBA世界ミドル級タイトルマッチが、12日にエディオンアリーナ大阪で行われ、前王者・村田諒太(帝拳)が世界王座奪還に成功した。王者ロブ・ブラント(米国)に2回2分34秒TKO勝ち。昨年10月に米ラスベガスで行われた世界戦で、王者だった村田は大差判定負けで挑戦者ブラントを相手に王座陥落したが、9か月ぶりの再戦で見事リベンジに成功。試合後、世界王座返り咲きまでの道のりを振り返った帝拳ジム・本田明彦会長の言葉に、戦前の不利予想を覆せた要因が隠されていた。

 興奮の中心にいた試合直後のリングインタビュー。村田はここまでの歩みに対する心境を問われると、くるりと自陣の青コーナーを振り返り、頭を下げた。「まず、本田会長、こんな僕にチャンスを作ってくれてありがとうございます!」。声を震わせ、涙をこらえながら感謝を伝えた。

 村田の会見後、71歳の本田会長は手放しで称賛した。「前回と別人だった。徹底的に対策を考えて、その通りやってきた。でも、一番は気持ちですよ。何しろ半歩前。避けるのも半歩前、攻めるのも全部半歩前。その勇気があるかないかで今日の試合は決まり。その勇気はさすがです。前回はハングリーじゃなかったけど、ここまでやれたのはあいつの凄さ。リングでやったことは(前回と)全然違う」。帝拳ジムに世界のベルトを奪い返した村田の姿に目を細めた。
 
 村田は王座陥落直後、引退するつもりだったが、約1か月悩み抜いた末に現役続行を決めた。32歳の村田から再起の意思を告げられ「最初は受け入れなかった」と本田会長。ミドル級で再びトップ戦線まで引き上げるには、手間も資金も必要だった。それでもボクサーとして納得のいく終止符を打たせるため、村田の気持ちを尊重した。

 12月に今後の方針を話し合った。タイトルを失い、世界中に強豪がひしめくミドル級で再び世界挑戦の機会を得るのは困難を極める。村田自身は再起戦で世界戦を行うことやブラントへの雪辱にはこだわらず、ノンタイトル戦でも、階級を変更してもいいという姿勢だった。

 しかし、蓋を開ければいきなり世界戦、しかもリベンジマッチを組むことに成功。本田会長は「ブラントに勝てなきゃ仕方ない。(村田が米国でプロモート契約を結ぶ)トップランクのおかげです。トップランクが試合を決めてくれて、助けてくれた。非常に感謝しています」とマッチメークを振り返った。

 前回のブラント戦は、手数が減り、素早い連打に晒された。体勢が崩れて反撃もできない悪循環。それを9か月で克服した。ジムワークでは、本田会長も見守り、低い姿勢を保ち、前に出続けることを徹底。新たにカルロス・リナレストレーナーがミットを持ち、パンチのテンポを上げさせた。会長自ら手取り、足取り教えることも少なくない。村田は耳にたこができるほど繰り返し言われたが、6月のミット打ちを見た本田会長は村田に向かって親指を立てた。再戦のリングに上がる準備はできていった。

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