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伊藤雅雪は井上尚弥に続けるか― 異色の王者が勝利の先に見据えるロマチェンコへの道

スコットランド・グラスゴーで衝撃的なTKO勝利を飾り、世界的な名声をさらに高めたボクシングWBA世界バンタム級王者・井上尚弥。モンスターに続けとばかりに、世界を熱狂させる可能性を秘めている男がいる。WBO世界スーパーフェザー級王者・伊藤雅雪。中量級で今、海外から大きな注目を浴びる日本人王者だ。25日(日本時間26日)にフロリダ州キシミーでジャメル・ヘリング(米国)の挑戦を受ける。

WBO世界スーパーフェザー級王者・伊藤雅雪は中量級で今、海外から大きな注目を浴びる存在だ【写真:荒川祐史】
WBO世界スーパーフェザー級王者・伊藤雅雪は中量級で今、海外から大きな注目を浴びる存在だ【写真:荒川祐史】

日本時間26日に2度目の防衛戦迎える伊藤雅雪、単独インタビュー前編

 スコットランド・グラスゴーで衝撃的なTKO勝利を飾り、世界的な名声をさらに高めたボクシングWBA世界バンタム級王者・井上尚弥。モンスターに続けとばかりに、世界を熱狂させる可能性を秘めている男がいる。WBO世界スーパーフェザー級王者・伊藤雅雪。中量級で今、海外から大きな注目を浴びる日本人王者だ。25日(日本時間26日)にフロリダ州キシミーでジャメル・ヘリング(米国)の挑戦を受ける。

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【後編】現役引退か否か 「リングが怖かった」伊藤雅雪はなぜ、再び戦う道を選んだのか

 階級を問わず強さをランク付けする「パウンド・フォー・パウンド」で1位に君臨するライト級2団体王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に今、最も近い日本人選手であることに疑いの余地はない。昨年37年ぶりに米国でのベルト獲得に成功。好選手がひしめく階級で世界的な評価を獲得しつつある。

 爽やかな笑顔が印象的な、華のある好漢。一見しただけではボクサーには見えないが、その心の奥底にはビッグで熱い思いを秘めていた。「THE ANSWER」では伊藤を単独インタビュー。前後編に分けてお伝えする。

 ◇ ◇ ◇

 リングに上がるのは「今でも怖い」とハッキリ言う。「できれば上がりたくない」と笑う。ならば男は、なんのために戦うのか――。夢がある。高い志がある。「自分のやってきたことを残すには、恐怖を乗り越えるしかない」。伊藤雅雪という名前を残すために、恐怖と孤独を背負ったまま、己の拳一つで戦う。

 名を残す――。伊藤にとって次戦は自身の運命を大きく左右する一戦になる。勝てば歴史的なビッグマッチへの道が大きく開ける一戦だ。一方で負ければ、チャンスは大きく遠のく。重要な米国決戦へ、まずは頭で描いているイメージを明かしてくれた。

「米国の選手で黒人特有のバネがある。やったことない体型の選手。やりにくい選手ではあります。自分もこの階級では大きい方(174センチ)だけど、自分よりも一回り大きい(178センチ)。ですが、スピードは自分の方が上回っている。やってみてのギャップを埋めていきたい。あとはサウスポーですよね。唯一負けているのがサウスポーなんですよ。でも苦手ではないです。合計で5試合くらいはやっているが、全部倒していますから」

「やりにくい相手」――。相手のことを冷静に分析しながら、米国のリングで再び勝ち名乗りを受ける姿を想像しているのだろうか。表情は実に楽しそうだ。

 伊藤が今、ボクシングのリングに上がっているのはある意味では奇跡なのかもしれない。幼少期から打ち込んでいたのはバスケットボール。バスケ推薦で高校に進学した。

「高3でバスケは燃え尽きていました。じゃあどうしようと……。もともとK-1が好きで、魔裟斗さんが憧れでした。強いってかっこいいなって思って。親には反対されましたが、高校3年生でバイトもしていたので、自分でジムの月謝を払うと言って説得しました。いとこがたまたま近所のボクシングジムに通っていて、なら自分も高校生でプロのライセンスが取りたいなと。

 試合はする気はなかった。自分の中でK-1でもボクシングでも格闘技はカッコいいなって。当時はジャンルの隔たりはなかったんですよね。近くにあったのが、キックボクシングのジムだったら……今頃キックをやっていたでしょうね」

 たまたま家の近くにあったのがボクシングジムだった。プロのライセンスをもっていれば、かっこいいから、という理由で軽い気持ちで始まったボクシングキャリア。それが世界王者の原点なのだから人生というものは面白い。

「とりあえずライセンスを取って、プロボクサーを名乗りたかっただけなんです。プロテストに合格して、プロを名乗れたからもういいやと。試合をやるつもりは全くなかったんですが、スパーをやったり、ジムにいってサンドバックを打ったりすることが新鮮でした。特に目標もないままずっと練習をしていました。そうしたら試合が組まれますよね。『NO』と言えないタイプなので、1回くらいやってみようかなって(笑い)」

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