井上尚弥がスコットランドで起こした衝撃 その時、現地ファンはビールをこぼした
現地のファンも大興奮、勝利の瞬間には思わず握手を
“もうダメだ”の合図なのか、陣営からのタオル投入を阻止するサインなのか、真相は分からない。だが、2ラウンドでこんなにもはっきりと表情を曇らせるシーンは見たことがない。それも無敗の王者で、井上の最大のライバルと言われた男の姿なのだから、信じられないようなシーンだ。それでも立ち上がりファイティングポーズを取った意地は称賛したいが、もうやめた方がいいよとも素直に思った。
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KOタイムは2回1分19秒。すごいものを見た。グラスゴーまで来て良かった。前回のパヤノ相手の70秒KOも衝撃だったが、それ以上だ。前回は「え、もう終わったの!?」というのが率直な感想だったが、この試合はロドリゲスの強さも見えた上で、3度もダウンを奪っての勝利。強いのは知っていたけれど、こんなにも……。
会場も文字通り衝撃を受けた様子だ。「ヨッシャー」と叫ぶ井上の姿に、現地ファンも総立ちで喝采を上げていた。隣の席のおじさんは興奮のあまり、ビールを私のズボンにこぼしていたが、そんなことはどうでもいいだろとばかりに握手を求められた。「アメージングだ! オレの言った通りだろ!」って多分、言っていた。私も興奮していたので、あんまり覚えていないけど。
こんなボクサーがリアルタイムで見られる時代に生きていて幸せだ。大げさではなくそう思った。試合後の囲み取材で、井上は笑いながらこう振り返っている。
「吹っ切れた感はありますね。今日の喜びも、重圧から解放されたような、自分の中では喜びも爆発しましたし。期待に応えられたというか。皆さんがプレッシャーかけてくださるので(笑)」
計り知れない重圧を乗り越えて、結果を出した王者に心からの拍手を送りたい。
(THE ANSWER編集部・角野 敬介 / Keisuke Sumino)