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陸上部が廃部…突然打診、返事は「明日の昼までだ」 ドン底から箱根常連校へ、強化した名将の転機――帝京大・中野孝行監督

帝京大のスカウティング方針「目が生き生きしてるかどうか」

――スカウティングする際は、どこを見ていますか。

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「走力とか人間性も大事ですが、私の質問に対して答えがズレていないかどうか。目が生き生きとしているかどうか。走力がある選手は他の大学に獲られてしまうので、身体能力が高いことに越したことはないんですが、メンタル的に強い選手を選ぶ傾向にあります。親御さんには、事前にこういう指導をしていきますというのを説明しますが、その時、『中野監督って優しいと聞いていました』とよく言われるんです。意外な表情をされるので、『優しいわけないじゃないですか。優しかったからこのレベルの選手たちを箱根で戦えるレベルに上げることはできないです。厳しいわけじゃなく、必要なことをやっているだけです』という話をします。優しいとかいい人とかいうのは、その人にとって都合のいい人ということで自分を向上させるためにはマイナスでしかないんですよ。逃げないように真正面を向かせていくことが指導だと私は思っています」

――今の学生を見ていて、帝京大への見方、学生の質は変わってきていますか。

「もう19年も連続で箱根に出場していますし、卒業生が五輪や世界選手権に出たり、3大駅伝で区間賞を取った選手が出たことで、うちの大学の見方、評価は変わってきていますね。今年、入学してきた学生や来年、入学予定の高校生はうちを箱根で9位、10位のチームとは見ていないです。もっと上を目指せるチームだと思っていますし、自分たちが上に上げていくみたいな覚悟を感じることができます」

――指導者の評価は、どう考えていますか。

「やるからには勝った方がいいのは間違いないです。ただ、勝つために手段を選ばないというのは、よくないですね。大学スポーツは教育がベースにあるので、そこをなおざりにしてはいけないんですよ。私は、学生たちに箱根が終ってもちゃんと生きていけるようになってほしいと思っています。就職して何年か経過して、『なぜ、そんなに頑張れるんだ』と上司に聞かれた時、『箱根駅伝の時はこんなもんじゃなかった、あそこを耐えることができたので今がある』と言ってほしいなって思うんです。そういう人間をどれだけ輩出することができるのか。それも指導者の評価の一つだと思いますね」

(佐藤 俊 / Shun Sato)

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佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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