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世界の強豪に15-19肉薄、低迷ラグビー日本代表に何が… 抗った宿命、感じた異質「ノーガードの打ち合いが…」

防御面に日本の進化の一端が見られた【写真:JRFU】
防御面に日本の進化の一端が見られた【写真:JRFU】

従来のスタンダードから感じた異質 ノーガードの打ち合いを捨てて

 実際のプレーを見ても、前半19分には自陣ゴールラインを背負った防御でワラビーズの19次攻撃を守り続けた。結果的に反則を犯してしまったが、再び猛攻を受けても10次攻撃を耐え続け、痺れを切らした相手がボールをBKに展開したところをWTB石田桔平(横浜キヤノンイーグルス)の好タックルで阻止。都合29フェーズを守り続けたことになる。

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 日本代表は伝統的に体格面では強豪国に劣っていた。そのため、接点でパワーゲームに挑むよりも、体の軽さ、俊敏さを生かしたスピード勝負が伝統であり、生命線でもあった。このような宿命の中で、フィジカリティーの格差もあり防御面では淡白さを見せてきた。乱暴に表現すればノーガードの打ち合いのようなゲームで上位国に挑んできたのが日本代表の歴史でもあった。だが、世界ランク7位相手に、この日、桜のジャージーが浴びせかけたタックルは、従来のスタンダードからは異質のものに感じられた。

 防御面の強化を担うのは南アフリカ出身のギャリー・ゴールド・アシスタントコーチ(AC)。2014-15年シーズンには神戸製鋼(現コベルコ神戸スティーラーズ)のHCを務め、その前後にはイングランド、南アフリカのクラブでコーチを歴任。アメリカ代表HCを経て、この秋に正式にコーチに就いてから1度もメディア対応がないのは残念だが、エディーがその手腕をこう評価する。

「彼はマッドサイエンティスト(気の触れた科学者)のような人で、木曜日にはアップルストアで練習に使えそうな機材を買い漁り、テクノロジーを駆使して徹底的に(防御を)究明するような人。それだけじゃなく選手にハードワークを科し、いいディフェンスを落とし込んでいる。選手がワクワクしながらディフェンスに打ち込めているのは、彼がいるからです」

 渡英直前に都内で行われた練習では、FL下川甲嗣(東京SG)が、より具体的なディフェンスの取り組みと進化を説明してくれた。

「パシフィックネーションズカップで、ゴール前防御から点を取られることが(何度か)あったので、その反省を踏まえて合宿で練習はしてきたし、そこがオーストラリア戦で出せたのは良かった。ゴール前防御では、相手の攻撃をただ見て、待っているだけじゃ止められないので、立ち上がって直ぐに次のプレーが出来るポジショニングをして、アクションが起こせる状態にいち早くなるようにしようと改めて話をしていた。システムももう一回整理しました。(具体的には)構える姿勢から確認して、陸上競技のクラウチングスタートのような、手を地面に着くくらいの低さで、相手が(密集から)ボールを持ち上げた瞬間に差し込めるような態勢を作ることです」

 取材を続けていても、何か特別なスキルや考え方がディフェンス面で落とし込まれるというよりは、立ち上がって直ぐに次の防御ポジションを取る、低い姿勢を徹底するなど基本動作、そしてチームが掲げる「超速」を防御でも求めるというのが日本の取り組みだ。それを泥臭く、グラウンドで選手の体に叩き込む。ゴールドAC就任前の今夏の合宿では、チームは素早い出足で相手に襲い掛かるラッシュアップディフェンスに取り組んでいたが、そこに新AC仕込みの泥臭いタックルがミックスされて、防御が研ぎ澄まされてきた。

 昨年発足したエディー体制では、ゴールドが3人目のディフェンス担当だ。コーチにも常にハードワークを求めるエディーの下では、多くのスタッフの新陳代謝が起こるのが難しいところだが、ようやく防御コーチングがピッチの上で機能し始めている。世界7位に浴びせ続けた防御を、次戦の南アフリカをはじめとした世界の強豪相手にも見せることは出来れば、2年後に迫るワールドカップへ向けて大きなステップになる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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