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世界の強豪に15-19肉薄、低迷ラグビー日本代表に何が… 抗った宿命、感じた異質「ノーガードの打ち合いが…」

試合後の会見に出席したワーナー・ディアンズ主将(左)とエディー・ジョーンズHC【写真:JRFU】
試合後の会見に出席したワーナー・ディアンズ主将(左)とエディー・ジョーンズHC【写真:JRFU】

発展途上の超速ラグビー 苦闘を物語る数値

 今季テストマッチ7試合中5戦で先発出場して、この試合でも俊敏なパスワークとラン、キックで相手を“掻きまわした”SH藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が、こう振り返る。

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「オーストラリアはブレークダウンでのファイトをすごく徹底してきました。ちょっとグレーな所を攻めながら。それで、こっちもフラストレーションが溜まってしまった」

 相手は密集の中でも反則か否かというグレーゾーンで戦いを仕掛けてきた。過去2度の世界一を経験するラグビー大国の選手たちは、激しいぶつかり合いだけではなく、レフェリーも十分に目視出来ない密集戦の中でも、反則ぎりぎりで体を押し込みボールを確保し、クイックにボールを出そうとする日本の動きを封殺することで、テンポの速い球出しを遅らせた。キックオフ直後に、ラインアウトから大型CTB中野将伍(東京サントリーサンゴリアス)が縦に突っ込んでポイントを作ろうとした瞬間、相手FLにあっさりとボールを奪われたのも象徴的なプレーだった。日本の2人目、3人目のサポートが遅すぎたのだ。世界規格のラグビーでは、「超速」はまだまだ発展途上だ。

 この接点での苦闘は数値でも読み取ることが出来る。前半のボール保持率はオーストラリアが59%、日本は41%だったが、注目すべきは「ポスト・キャリー・メーター」と呼ばれるデータだ。一般的に「ランメーター」と呼ばれるケースも多いが、細かくは相手とコンタクトしてからどれだけ前に攻め込めたかを指す。前半はオーストラリアが通算100mキャリーしたのに対して日本はわずか13mという数値が出ている。一見すると、何かの計測ミスかと思う信じ難い低さだ。

 実際に前半中盤には注目のFB矢崎由高(早稲田大3年)が左サイドで13m以上のランを見せている。だが、これは相手のキックで陣地を大きく下げられた位置からのカウンターアタックで、攻撃の起点となるゲインラインを越えられていない状況でのプレーだった。正確なメートル数はとにかく、両チームに相当大きな格差があったのは間違いない。前半40分をみれば、日本がアタックチャンスを得て展開しても陣地を前に進められず、スコアはもちろん、相手防御を崩した有効な攻撃はほとんど見られなかった現実が浮かび上がる。

 前半を終えてスコアは日本の3-14。攻撃の目安になる敵陣22m突破も、日本は相手オフサイドによるPGにより他力で1度しか出来なかった。だが、厳しい戦いに藤原が苛立ちを感じた一方で、ワーナーは冷静にゲームを見つめていた。

「前半あれだけプレッシャーを掛けられて、あれだけ自陣でプレーさせられて、2トライしか取られていないのはすごく自信になった。イエローカードも2枚出たけれど、ゴールライン前でもいいディフェンスが出来ていた。それが後半に向けての自信になって、強みのスピードのあるアタック、フィットネスを使ったラグビーが出来たと思います」

 ワラビーズが優位を決定的にするはずの前半37、39分のトライが、TMO(ビデオ判定)で立て続けに取り消されたのも日本の反撃には大きなポイントになったが、それ以上にワーナーが指摘した日本のディフェンスが防戦一方の中で機能していたことが、最終スコアで4点差に肉迫する戦いの源泉となった。この防御力が、ワラビーズ戦最大の評価ポイント、収穫なのは間違いない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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