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使い果たした“貯金”から投資、再興…エディー2年目、日本代表から聴こえる進化の鼓動は本物か

選手たちからも進化を実感するコメントが聞こえてきた【写真:(C)JRFU】
選手たちからも進化を実感するコメントが聞こえてきた【写真:(C)JRFU】

李が語るチームの進化「モメンタムは去年より断然今年のほうが」

 トンガの縦への圧力に苦戦して先制トライも奪われたが、日本はダブルタックルでパワーに対抗して、密集戦でボール獲得が難しいと判断すれば、無理なファイトを避けて素早く次のプレーに備えた。前半奪われたトライ3個は、全て相手のパワー、個人技で奪われたもの。SO李が「ダブルタックルはしていたが食い込まれていた」と課題に挙げていたが、組織として崩された失点ではないことはポジティブな材料でもある。前半30分前後の数値で、タックル回数はトンガの22回に対して日本は66回。これだけタックル回数の差がありながら、成功率でも日本の90%、トンガ84%と上回っていた。この数値が、エディーが口癖のように唱えるエフォート(努力)を、苦戦の中で日本の選手たちが見せていたことを物語っている。

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 反則数でも、前半の日本は4。過去2試合に比べると飛躍的に減少していた。トンガの前半2には及ばなかったが、後半は日本の2に対してトンガは8と逆転している。カナダ戦、アメリカ戦共に12を数えた反則だったが、この課題をPNC3戦目で修正出来たこともチームの成長と評価していいだろう。試合後の会見でエディーは「反則というのは相手のプレッシャーから起こるもの。攻守共に前半受けたプレッシャーを後半見事に挽回して、逆にトンガに重圧を与えられたことでああいう展開になった」とチームを称えている。

 試合を重ねる毎に司令塔としての存在感を高めている李も、チームの進化をこう語っている。

「ゲームプランが明確になっているし、自分たちの強みが何なのか、どういうラグビーがジャパンのラグビーかを理解している選手が本当に増えていると思う。自信は去年よりもあると思います。タフなPNCをここまで勝ち抜いた自信もあるし、アウエーの中で一緒に過ごして、オンフィールド、オフフィールドでしっかりコネクション出来ているので雰囲気、チームのモメンタム(勢い)は去年より断然今年のほうがある。ゲームプランとゲームコントロールというところで、上手く自分たちが同じページを見えているのが結果に表れている」

 こんな自信を胸に挑んだ決勝戦だったからこそ選手の落胆も大きかったはずだが、フィジー戦から学ぶべきものは明白だろう。冒頭に触れた先制トライは評価できるが、20分以降はフィジーのゲームに転じてしまった。致命的だったのは、アンストラクチャーな状況から一気に防御を破られトライを量産されたことだ。前半21分の初めて奪われたトライは、フィジーのキックオフボールをタップされ、そのまま繋がれて許した。続く31分のトライも、フィジー陣22mライン内で日本が攻め込みながら、ファンブルしたボールを一気に80m以上つながれて喫するなど、失点の多くは日本がミスからストラクチャーを失った状況で奪われたものだった。相手のアタック能力に加えて、1対1のシチュエーションになるとフィジカリティーで圧倒されたことも格差を感じさせた。

 エディーは試合後の会見では「トランジション(攻守の切り替え)のところで前半に失点してしまった。ここを課題として捉えています。今日のフィジーには、まさに身体能力の高さを見せつけられました。世界でもずば抜けたチームで、ターンオーバーから簡単にトライを獲られたところもあった。パワーやサイズがなければ、スキル、スピード、そして戦術面で上回らなければいけない」と指摘。このコメントが、秋のさらに実力のある相手との対戦への課題になるが、エディーはこうも言及もしている。「日本は後半にしっかりと対応して、戦術面でも優れた戦い方が出来た。セットプレーでは優位に立つことも出来た。全体を通してチームとして機能出来るようになったのを垣間見れた試合だった」。昨季の決勝では、10-10で折り返したものの、後半ギアを上げてきた相手に残り20分で4トライを畳み掛けられたが、今季は猛攻を受けながらも最大23点のビハインドで喰らいついて逆転勝利に指を掛けた。

 試合毎に冷静な判断、プレー選択をみせてきた長田は決勝および大会をこう振り返った。

「自分たちが求めている超速ラグビーをチャレンジし続ける中で、通用する部分がこの試合(フィジー戦)でも見れたので、そこは収穫だと思います。ランキング上の相手に、あとトライ1個で追いつけるところまで行けた。これくらいの差を、どの試合でも続けられることが僕たちの成長には大事かなと感じています」

 大会を通じても見せ始めた組織として連携して、パワーや個人技に対抗していくジャパンらしさを、これから挑むワンステージ上の強豪相手にどこまで発揮して、太刀打ち出来るのか。フィジー相手に「垣間見れた」新生エディージャパンのラグビーを、秋のテストシリーズで「勝因」に転換出来るのかを見守りたい。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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