使い果たした“貯金”から投資、再興…エディー2年目、日本代表から聴こえる進化の鼓動は本物か
PNC4試合で可能性を印象付けた選手たちを紹介
今回は大会を通じてのエディージャパンのチームとしての課題や進化にフォーカスを当てたコラムになったが、昨季、今季の結果からも判るように、日本代表にとってPNCは、その大半の試合が勝利はマスト、ランキングが下位の相手との試合で若手の経験値を上げていくことも大きな目的の大会だ。最後に今回の4試合で高いパフォーマンス、可能性を印象付けた選手にも触れておこう。
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すでに名を挙げたライリー、ガンターは、期待通り2027年へ向けたコアメンバーとしての実力を証明した。2021年の代表初デビューから期待されていたガンターは、怪我などの影響で“遅咲き”の存在だったが、今回出場した準決勝までの3試合全てでチーム最多のタックル回数をマーク(うち2試合は両チーム1位)してインパクトを残した。トンガ戦後の取材対応では「プレータイムを伸ばすことは個人的に目標だったので、80分プレーすることを意識していました。そのためにはフィットネスなど自分のキャパシティを上げることにフォーカスしてきました。これからも80分間相手をドミネート(圧倒)することを強みにしていきたい」と意欲を語っている。常にフルスロットルでコンタクトを続けるのがスタイルのため、この先も怪我のリスクをどこまで回避してプレータイムを伸ばせるかが注目される。
FWではHO江良が、フィールドプレーのワークレートの高さでアピールした。本人は「フィジカルのところで絶対に前に出続けようと意識して、そう出来ていたと思う。スクラムでも、相手の組み方などをフロントローでコミュニケーションを取っていいスクラムが組めた」と充実ぶりがコメントに滲んだが、主力の原田衛が怪我がちだった影響もありプレータイムを伸ばせたことも成長を後押ししている。身長172cm、体重106kgとテストマッチレベルではサイズには恵まれないが、中継映像で常に背番号2が映るほどフィールドプレーで常にボールに絡み、タックルなどコンタクトプレーでは低さも武器に対抗出来ていた。
江良と高校、大学の同窓だったFL奥井は、まだプレータイムをどこまで伸ばせるかに挑戦中だが、タックル、ブレークダウンと接点での積極的なチャレンジを見せてポテンシャルを印象付けた。国内リーグとは違い、テストラグビーではフィジカリティーだけで相手を圧倒するのは難しいが、そのひたむきなプレーとワークレートが光る。本人、HC揃ってオープンサイドFLでのプレーを考えているが、秋のティア1勢とのゲームで、どこまでワークレートでアピールしてコーチ陣の信頼を勝ち獲り、メンバーに食い込めるかがテーマになる。
今季初テスト組では、LO兼バックローのワイサケ・ララトゥブア(神戸S)もフィジカルと常にボールをサポートするワークレートを併せ持つユーティリティーさを印象付けた。すでに19キャップを持つPR竹内だが、トンガ戦では通常ならBKが上位を占めるランメーター(ボールを持ってアタックした距離)で両軍トップの64mを記録。毎試合何度もチャンスを創り出したボールキャリー、ワークレートに加えて、課題だったスクラムでも安定感を見せ始めている。PNC勢よりも大きく、強く、セットプレーに拘りを持つティア1勢とどこまで組み合えるかがテストになる。
BKでは、SH藤原が攻撃を加速させるパスワークに磨きをかけた。主力SHの齋藤直人が所属するスタッド・トゥール―ザン(フランス)のプレーを優先したため、プレータイムを伸ばせたのが成長を後押しするが、アグレッシブさを感じさせるほどの密集からいかに早くボールを展開させるかというプレースタイルが「超速」にマッチ。SO李に、常により早くボールを持たせているのも評価材料だ。パス以外にも、キックで相手のスペースを突く視野も成長を感じさせるだけに、フランスで鍛える齋藤と代表で進化を続ける藤原のこれからのマッチアップが楽しみだ。
藤原とコンビを組んだ李は、このコラムで再三触れてきたようにゲームマネジメント、パス、ラン、キックというプレーのチョイスで進化を印象付けた。エディーは昨季から主戦SOという評価をしてきたが、厳しい見方をすれば世界の8強を争うレベルの10番として、どこまで相手の脅威になるかは疑問だった。だが、PNCでの戦術・戦略を踏まえたプレーは、このレベルでは十分に対戦相手にプレッシャーをかけ、チームを少なくとも準決勝で勝ち切れるレベルまでリードしていた。大会トータルで90%超という高いキック成功率は、テストレベルのゲームを勝ち切り、2年後のW杯で戦う上でも大きな武器になる。
若手の起用が目立ったBKだがWTB長田の冷静かつ適切なプレーの選択は、25歳ながらいぶし銀の輝きを放った。本来はCTBだが、大会中での取材でも本人が「(代表では)練習もWTBだけ」と語っているため表記はWTBにしておくが、ゲーム展開の中でボールを繋ぎ、ピンチで着実に防御をカバーする判断力と遂行力、ゲーム展開を読む能力が際立っている。CTBライリーや、今大会で主力として活躍したローレンスのような個人技、パワーを持った派手な選手ではないが、どんな戦況でもプレーが計算出来る仕事人として、秋のトップレベルのテストでもどこまで持ち味を発揮出来るかに注目したい。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)
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