敗れたウェールズ第2戦で先発出場、トゥールーザンSH齋藤直人に見えたもの

　ラグビー日本代表は7月12日に兵庫・ノエビアスタジアム神戸で行われた「リポビタンDチャレンジカップ」第2戦でウェールズ代表に22-31で敗れた。ティア1（世界トップ10クラスの強豪）から史上初の連勝に挑んだが、19連敗を回避しようと第1戦から修正を加えてきた相手に阻まれた。苦杯の一方で、今季のフランス国内リーグで3連覇を果たしたスタッド・トゥールーザンでプレーするSH齋藤直人が昨年11月のイングランド戦以来の先発出場。フランス最強クラブで経験を積んできた9番が見た、2シーズン目のエディージャパンの進化、そして課題を聞いた。（取材・文＝吉田 宏）

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　勝者、敗者を問わず選手が頭からバケツの水をかぶったような汗まみれでピッチから引き揚げてくる中で、フランス最強チームで1シーズン揉まれてから初めての代表戦を、齋藤はこう振り返った。

「用意していたプランは成功したつもりですけど、試合後に話し合ったのは、それが前半上手くいかなかったときに、次どうするかということです。そこは不十分でしたね。後半も開始5分、10分はものすごくモメンタム（勢い）がありましたし、あそこでスコアを獲り切らなければいけなかったと思います」

　すこし悔し気ながら淡々と振り返った敗戦は、8月、そして秋の代表戦への宿題を浮き上がらせた。現状での日本代表とウェールズ代表の実力を見ると、第1戦のスコア（24-19）、そして12～14位あたりに立たされる世界ランキングがよく物語っている。日本が史上初のティア1チームからの連勝に挑んだ第2テストだったが、ゲームは常に日本が1、2トライ（ゴール）のビハインドを追う展開。そして最後まで、その差を詰め切れずにノーサイドの笛が鳴り響いた。

　試合後の会見で、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ（HC）が顔をしかめて話し出した。

「スクラムでは競り合うことが全く出来なかった。この結果には本当に落胆しています。我々が優位になれる1つのコンテストを取り上げられてしまった。空中戦、ラインアウトでの競り合いも相手に上回られて、結果的には試合にも負けてしまった」

　スクラムに関しては、成功率は100％だったが数字に表れない現実もあった。完全に押し切られることもなかったが、相手に十分にプレッシャーを掛けられず、上手くコントロールされるシーンもあった。1週間前にFW第1列では異例の80分間フル出場をさせたPR紙森勝太（クボタスピアーズ船橋・東京ベイ）、HO原田衛（前東芝ブレイブルーパス東京）を再び先発起用。前半途中から消耗も見られ、前半37分には1列3人全員を入れ替えざるを得なかった。

　エディーは「ゲームの流れを変えたかった」と早い入れ替えを説明したが、確かに投入したPR竹内柊平（前浦安D-Rocks）が出場から3分でトライを決めるなどの効果はあった。しかし、前週の敗戦で消沈する相手に、立ち上がりで主導権を掴んで優位に立とうという戦略的な観点でみれば、メンバリングによるギャンブルの“ツケ”も十分にあった起用法だった。

　スクラムで日本が第1戦ほどの圧力を掛けられなかったことも響いて、ウェールズに自分たちの強みである展開力で攻め込まれた。9分の先制トライは、ターンオーバーからの速攻に、アタックラインが見事なバックステップを使いながら攻撃に必要な深みを保ち、CTBベン・トーマス―FBブレア・マレー―19年W杯トライ王のWTBジョシュ・アダムスの巧みなパス交換で防御を切り崩された。28分の2トライ目は執拗なFW戦から奪われ、36分の3トライ目は日本がシンビンで1人少ない状況で容易くラインブレークされて許すなど、前半で3トライを積み上げられた。後半22分のトライで22-24と迫ったが、残り5分でウェールズの左展開で崩されて止めを刺された。