53失点惨敗発進、若きラグビー日本に露呈した課題「215m-364m」数値で明白 可能性を感じさせた「2」の存在
究極的な課題はブレークダウン、つまり接点での攻防
2023年のW杯出場後は怪我の影響で代表を離れていた先発SH福田健太(東京サントリーサンゴリアス)は、久しぶりの“代表戦”にも冷静にゲームを振り返っている。「NZのチームに前に出られてしまうと、オフロードパスを駆使して繋がれてしまう。もっとブレークダウンやセットプレーで圧力を掛ける必要があるのではないか」という問いかけに対して、こう答えている。
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「プレーしている側も同じ意見なんです。前半は僕らも動けていたので、2人でファイトする意識でプレーしていた。それが出来ない状況でも、1対1で止められていたのが大きかった。トランジション(攻守の切り替え)も、戻りも良かった。でも、後半に足が落ち始めて、相手に前に出られてしまった。今後は苦しい時間帯に簡単にゲインを与えないことが課題でしょうね」
前半の五分の展開の中でも、若干無理して攻め急いで、ミスなどで攻撃権を失うシーンもあったが、これは昨季からの日本代表の課題でもある。
「ちょっと取り急いでしまったところはあったかなという印象だった。外のスペースに結構ボールは運べていたと思うので、敵陣22mライン内に入ってからもしっかりと我慢強くフェーズを重ねていく必要がある」
ゲームコントロールは、福田や“代表”デビューだったSOサム・グリーン(静岡ブルーレヴズ)らHB団の役割でもある。ウェールズ戦で、今回の経験も踏まえてどのようにゲームとチームをオーガナイスして行けるかも注目ポイントになるだろう。
究極的な課題はブレークダウン、つまり接点での攻防だろう。エディーも「ジャパンはそこまでパワーのあるチームじゃない」と語るように、日本代表はフィジカルやパワーで相手を圧倒するチームではない。だが、人数やワークレートの工夫や努力で、接点での戦いでも相手を凌ぎ、自分たちの求めるスピードでボールを継続、展開するのが信条だ。過去に結果を残した2015年ワールドカップ(W杯)イングランド大会、そして19年日本大会でも、ブレークダウンでしっかりと戦えたことが躍進を支えてきた。
だが若手JXVの初陣を見る限りは、接点で戦えてないと評価するよりも、むしろ多くのメンバーが初めて経験するインターナショナルクラスのフィジカリティーに後手を踏んでしまったという印象だった。エディーのコメント同様にチーム内外、関係者の大半が「前半善戦、後半完敗」という評価を下したが、現実はもうすこし深刻に受け止めていいかも知れない。
今回対戦したMABも含めて、世界トップ10クラスのチームであれば、序盤戦は相手のフィジカルや戦術、スキルを確かめながら、手堅くセオリー通りのラグビー、準備された自分たちのゲームプランをしっかりと履行しようというメンタリティーで試合を進めていく。今回の前半40分を観ていても、MABはJXVの仕掛け方やフィジカリティーをワンプレー毎に体感、探りながら、その情報による“結論”を後半から実践に移したと考えていいだろう。後輩開始からの10分程が、このゲームの本質を物語っている。
後半開始直後にMABは、FBザーン・サリバンが思い切ったカウンターアタックを仕掛けている。ここ数シーズン、才気溢れるアタック能力が注目される15番は、迷うことなくW杯も経験するJXV主将のFL下川甲嗣(東京SG)を真っ向勝負でなぎ倒して前進。カバー防御に来たSH福田には、ヒットする力が弱い内側の肩、ウィークショルダーを狙いすまして当たりに行って、優位なポジショニングを保ちながらラックを形成している。その後、一度は攻撃権を失ったマオリだったが、FLジェローム・ブラウンの執拗な防御からカウンターラックで一気にボールを奪還すると、速攻からオフロードを駆使して、最後はLOラクラン・マックワンネルがJXVのBK2人をなぎ倒してインゴールへ飛び込んだ。
このプレーから読み取れるのは、後半キックオフの段階で、MABはJXV選手のフィジカルの強さ弱さを把握した上で、思い切ったコンタクト勝負とスキルを使って、勝負を仕掛けてきたことだ。スタンドから、このキックカウンターからトライまでの流れを見て感じたのは、前半は様子見しながらプレーしてきたMABが、ここでようやく本気のGOサインを入れたことだった。
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