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「出るだけで800万円」 南極もアフリカも…世界7大陸を飛んで毎日42.195kmの異次元マラソン、5日間19時間7分で世界記録

世界の過酷なマラソンレースに挑み続ける異色のプロランナーがいる。尾藤朋美さん、34歳。その脚ひとつで人生を切り開いてきたキャリアに迫る。全3回の第2回は「7大陸マラソン挑戦」。保育士から転身し、世界で最も過酷と言われるサハラ砂漠マラソン250キロを走破した。しかし、世間の反応は薄く「もっとメディア露出しないと」と決意。2023年11月、次に目指したのは7大陸マラソンだった。(取材・文=佐藤 俊)

「7大陸マラソン」の南極レースでゴールする尾藤朋美さん【写真:本人提供】
「7大陸マラソン」の南極レースでゴールする尾藤朋美さん【写真:本人提供】

世界の過酷なマラソンレースに挑むプロランナー・尾藤朋美さんの異色キャリア第2回

 世界の過酷なマラソンレースに挑み続ける異色のプロランナーがいる。尾藤朋美さん、34歳。その脚ひとつで人生を切り開いてきたキャリアに迫る。全3回の第2回は「7大陸マラソン挑戦」。保育士から転身し、世界で最も過酷と言われるサハラ砂漠マラソン250キロを走破した。しかし、世間の反応は薄く「もっとメディア露出しないと」と決意。2023年11月、次に目指したのは7大陸マラソンだった。(取材・文=佐藤 俊)

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「World Marathon Challenge」(7大陸マラソン)は、毎日42.195キロを完走後、休む間もなく飛行機に飛び乗り、計63時間もの移動と合計295キロを走破する過酷で難易度が高いレースだ。スタートは南極で、次に南アフリカ(ケープタウン)、オーストラリア(パース)、ドバイ、スペイン(マドリード)、ブラジル(フォルタレザ)、最後がアメリカ(マイアミ)になる。

 尾藤朋美さんは、このレースに出場することを決めた。普通にフルマラソンを走るだけでも大変だが、それを7日間、移動しながら毎日繰り返すレースは、とても人間業とは思えない。エントリー費も破格で、4万9500ドル。160円換算で約792万円だ。ただ、南極までの移動とマイアミからの帰国分は自費になり、南極には大きなキャリーバックを持参できないので、それを置くホテルも必要になり、トータルで850万円ほどかかる。

「エントリー費を含めて、なかなか個人で対応するのが大変なので、クラウドファンディングをして、みなさんにお願いしました。300万円が目標だったんですけど、締め切りの前日で200万円ぐらいだったんです。最終手段として達成するまで生配信しながら山手線を走りますという力技に出たら達成できました。まだ、500万円ぐらい足りなかったんですけど、物販したり、企業さんにお願いして、なんとか集めることができました。レースはサハラが一番大変でしたが、この資金集めは別な意味で一番大変でした」

 最初のスタート地点である南極は、基地ベースがある周囲に1周4.2キロのコースを作り、10周する。氷の色が変わるところが滑るので危険だが、気を配ったのは補給だ。何かを食べながらやジェルなどを飲みながら走ると生態系に影響が出る可能性があるので、プレハブに移動して、そのなかで摂らなければならない。

「そのプレハブがコースから遠いので時間をロスしてしまうんです。8キロを走った時点でもうやめようと思い、水だけで走っていたら3時間58分もかかってしまって。世界記録だと平均は3時間25分57秒なので、初日からかなりタイムを落としてしまいました。その後、プレハブでご飯を食べて、大会のチャーター機で移動するのですが、南アフリカから南極のフライトの時は機内食が出たので、楽しみに待っていたんです。でも、出なくて、5時間のフライトで到着して1時間後にはレースを走らないといけない。これはまずいと思い、ポテトチップスとチョコレートを食べて42キロを走りました」

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佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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