秩父宮ラグビー場の客席に“異変” あるリーグワンチームの試み、「南スタンド最前列を…」迎える特別な「3.30」
ラグビーのNTTリーグワン・ディビジョン1に所属するリコーブラックラムズ東京が、30日に東京・秩父宮ラグビー場で行われるコベルコ神戸スティーラーズ戦を「ユニバーサルデー」として開催する。敵味方に関係なく互いをリスペクトするラグビーのノーサイドの精神を尊重して、ゴール裏スタンドに大規模な車椅子エリアを設けるなど受け入れ態勢を整え、普段は観戦が困難なハンデキャップを持つ人たち、養護施設の子供たち300人を招待する。これまでも様々なチャリティー活動を展開してきたラグビーチームが、なぜ支援活動をさらに踏み込むのか。活動に携わる選手、スタッフが語る取り組み、思いの中に、ラグビーが社会とどう向き合い、何をもたらすことが出来るのかが浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

BR東京が30日の試合をユニバーサルデーに…客席の一部最前列はすべて車椅子席
ラグビーのNTTリーグワン・ディビジョン1に所属するリコーブラックラムズ東京が、30日に東京・秩父宮ラグビー場で行われるコベルコ神戸スティーラーズ戦を「ユニバーサルデー」として開催する。敵味方に関係なく互いをリスペクトするラグビーのノーサイドの精神を尊重して、ゴール裏スタンドに大規模な車椅子エリアを設けるなど受け入れ態勢を整え、普段は観戦が困難なハンデキャップを持つ人たち、養護施設の子供たち300人を招待する。これまでも様々なチャリティー活動を展開してきたラグビーチームが、なぜ支援活動をさらに踏み込むのか。活動に携わる選手、スタッフが語る取り組み、思いの中に、ラグビーが社会とどう向き合い、何をもたらすことが出来るのかが浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)
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12節を終えて4勝8敗のリーグ9位。苦闘の中でも浮上の兆しをみせるブラックラムズが特別な1日を迎える。
「今シーズンは、僕自身いろいろと障害のある方々とのイベントに参加させていただいている。その中で感じるのは、スポーツ観戦する機会というのはなかなかなくて、そこに今回のユニバーサルデーとしてフォーカスを当てることはすごく大事なことだと思っています」
ユニバーサルデーという初めての取り組みへの思いを語るのはCTB栗原由太。桐蔭学園高から慶應義塾大へ進み、日本ラグビーのルーツ校で主将も務めるなどリーダーシップは抜群だ。BR東京入りして5シーズン。現在は来季の完全復活を目指して怪我からの調整中だが、自ら志願してリハビリ以外の時間を使って交流してきた車椅子ラグビーの日本代表、聴覚障害者団体など支援が必要な人たちへの思いは強い。
「障害を持つ方は、僕の中ではいい意味でもう特別なことや対象じゃない。昨年12月に車いすラグビーの羽賀理之選手(パリパラリンピック金メダリスト)とのトークショーをしましたが、率直にリスペクトが大きかった。僕たちより困難が多いと思うんです。でも、それを何とも思ってないように過ごしている。本当は、そうじゃないかも知れないけれども、それにプラスして結果を残しているのは、相当な精神力があるのだなと思いましたね。でも、その一方で、すごく難しい、ハードルが高いんだなと感じることもあります。コミュニケーションの部分もそうですし、実際ラグビー観戦に来ることを考えれば、トイレの数も圧倒的に足りない。バリアフリーが充実しているわけじゃないなというのはすごく感じています。そういうところがもっと発展していくと、いろいろな人が楽しめる環境になるはずです」
ハンデキャップを持つ人たちへの特別な1日。試合当日は、支援が必要な人たちへの様々な取り組みが準備されている。これまでもチームが拠点を置く世田谷区を中心に、医療的ケア児への募金や交流、老人ホーム健康講座、世田谷手話言語条例支援PRなど社会活動に取り組んできたBR東京だが、そのネットワークを活用して様々な団体や養護施設などに声をかけ、視聴覚障害や車椅子が必要な人たちら300人あまりを受け入れる態勢を準備。車椅子利用者のためには従来の秩父宮では対応出来なかった規模の観戦スペースを設ける。
「南スタンドの最前列、横一列を全部車椅子席にします。これまでだと、秩父宮ではバックスタンド両サイドにそれぞれ10席ずつ、計20席かな。今回の南スタンドなら40家族分があると思います。雨が降ったら別の屋根のある所も用意しています」
今回のイベントの“仕掛け人”の1人、白崎雄吾クラブ・ビジョナリーオフィサー(CVO)が声を弾ませる。2022年にBR東京に加わった白崎CVOは、リクルートエージェントなどでのコンサルティング事業を経て、現在は人材育成やアスリートのセカンドキャリアに取り組む一般社団法人APOLLO PROJECT理事などを務めながら現職に就く。聞き馴れない肩書きのCVOだが、チームの価値をファン、地域へ発信し、関連性を深めるのが仕事の一部だ。