「10代がピーク」の常識を覆す34歳 30年間休まず、連日7000m…競泳・鈴木聡美が現役でいる理由
4歳から30年間泳ぎ続ける、ロス五輪への意識も
中学3年だった2005年に初めて日本選手権に挑戦した。驚くのは、以来20大会、1大会も欠かさずに平泳ぎの全種目に出続けていること。長く続ければ休養も必要になるし、欠場する選手も多い。4歳で水泳を始めて以来、休むことなく30年間泳ぎ続ける。今も毎日6000~7000メートルは泳ぎ、他に筋トレなども欠かさない。
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20大会の出場中にはいい時もあれば、悪い時もあった。100メートルも200メートルも10年以上勝てなかった。予選17位で敗退する屈辱もあった。それでも毎年、いずれかの種目で表彰台には立ち続けた。五輪金メダリストや世界選手権優勝者など国内のライバルたちは次々とプールを去っていったが、鈴木は今もプールから離れようとしない。
「(若い者には負けないと)言ってしまっても問題ないでしょうが、私にとっては年齢問わず一緒に泳いでくれる選手は心強い存在なんです。よきライバルがたくさんいることで、私も頑張らないとという気持ちになる。やるからには、自分も最大で勝負したい」
昨年のパリ五輪は「集大成」のつもりで臨んだが、200メートルで4位に入ったことなどで「もう少し」と現役続行を決意した。37歳で迎えるロサンゼルス五輪は意識せず「一年、一年」と言ってきたが、泳ぎの進化を続けることで少しずつ目標が見えてきた。
「ちょっと(ロス五輪の)意識が出てきましたかね。行けるならチャレンジしたい。たとえ(代表争いで)負けてしまっても、全力を出して臨めれば満足いく。今日みたいな熾烈な、熱量のあるレースができればいいなと思います。ただ、一個一個頑張っていくだけ。その段階を踏んでいければと思っています」
7月にはシンガポールでの世界選手権に挑む。この大会で代表権をとることに集中していたためか本番のイメージは持っていないようで、目標を問われると「もう1回、考えます」と笑った。12年ロンドン五輪で200メートル銀、100メートル銅のメダルを獲得してから13年、34歳は今も休むことなく泳ぎ続ける。
(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)