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比嘉大吾と堤聖也が揺らした脳、魂、そして命 負ければ転落人生、36分間でつくられた2人の空間

互いに激闘を称えてハグを交わす堤(奥)と比嘉【写真:中戸川知世】
互いに激闘を称えてハグを交わす堤(奥)と比嘉【写真:中戸川知世】

リング上の会話「勝敗はどっちでもいい」「いや、お前の…」

 血だらけになっても、最後まで拳を浴びせ続けた王者。記憶が飛んでも、本能で作戦を遂行した挑戦者。

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 脳と、魂と、命を揺らした36分間が終了。拍手の中心で2人だけの空間ができた。相手に体を預けないと立っていられない。

堤「最高だよ、お前」

比嘉「覚えてない。全然、覚えてない」

堤「ほんと強かった」

比嘉「どっちでもいい。勝っても負けても、もうどっちでもいい」

堤「いや、お前の夜だよ」

 3者とも114-114の引き分け。神様は決着をつけなかった。

 ベルトを守り抜いた堤は、素直な感情を吐き出した。

「悔しい。比嘉大吾との世界戦を楽しもう、今までやってきた自分をしっかり信じて戦おう、その気持ちでリングに上がった。ほんと命からがら生き延びた。大吾が勝っても文句を言えない内容。楽しくやれた。きつかったっすけどね。きつかったっすけど、楽しく殴り合えたんじゃないかな。

 この前の世界挑戦は、僕の今までの人生が否定されるか、肯定されるかだった。それが達成された後のチャレンジなのでやっぱり全然違う。心の持っていき方が難しかった。でも、相手が大吾だから緊張感を持って、楽しむ気持ちでいられたと思っている」

 周囲の感動をよそに、比嘉は柔らかい沖縄訛りの口調でおどけた。

「覚えておりません! すみません! あまり記憶が……飛んでますね。どういう試合だったのかも飛んでいる。やり切りました。でも、俺より野木さんや陣営の方が悔しいと思う。一度は引退を決めて、この試合が決まってからの3か月がまたきつかった。練習を始めた12月からずっと濃かった。また簡単にやるとは言えない。あとから悔しくなってくるのかな。

 堤はやっぱり精神が凄い。本当にいい試合。みんなは『(準備期間が)もっとあったら』と思うかもしれないけど、そうしたらまた集中力が切れる人間。結果はついてこなかったけど、良かったんじゃないかな。現役は……もういいかな」

 近いうちに会う約束をした。試合後の控室、ふざけた比嘉からほっぺにブチュッ。堤は呆れ顔をつくったが、心底思う。

「大吾、ありがとう。強かったよ」

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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