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報道陣激減、ロス五輪は非実施でも…「ブレイキンは変わらない」と言い切った意味 復活のカギは“ポスト・バッハ”

五輪復活のカギを握るのは次期IOC会長か

 もともと五輪とは別の世界だった。それが、突然のように五輪競技になった。認知度はアップし、周囲の反応は180度変わった。Shigekixはブレイキンの「広告塔」として積極的にメディアに出て、ポジティブな発信を繰り返した。環境は大きく変わったが、ブレイキン自体は変わらなかった。もともと五輪がすべてではない。だからこそ、五輪から外れても「ブレイキンは変わらない」と言い切れるのだろう。

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 もっとも、今後五輪でのブレイキンが絶対に見られなくなるというわけでもない。発祥の地でもある米国での28年ロス大会から外れたのは驚きだったが、次の32年ブリスベン五輪に戻ってくる可能性はある。東京五輪から採用された「開催都市提案の追加種目」では、競技の出入りは流動的。事実、東京で採用された野球・ソフトボールはパリで見送られ、再びロスで復活する。

 ブレイキンの「五輪復帰」を後押しするのは、昨年のパリ五輪での成功だ。選手たちは音楽に合わせて個性あふれるダンスを披露し、コンコルド広場に集まった大観衆やテレビの前の視聴者を感動させた。大会の中でも大きなトピックになった。

 国際オリンピック委員会(IOC)やWDSFが「大成功」としたパリ五輪のブレイキン競技。それまで「五輪にはふさわしくない」と懐疑的だった一部のIOC委員やメディア、さらに五輪に反対していた選手たちにもポジティブに受け止められた。「ふさわしくない」からこそ、大会にこれまでと違った価値を生み出すことができたからだ。

 24年パリ五輪の実施は、18年ユース五輪(ブエノスアイレス)での成功が後押しとなった。ロス五輪の追加種目決定がパリ五輪の後だったら、状況は変わっていたかもしれない。22年から延期された26年ユース五輪(ダカール)で成功すれば、ブリスベン五輪への道が開けるかもしれない。

 32年ブリスベン五輪の追加種目決定にカギを握りそうなのが、今年6月に就任するIOCの新会長だ。現在のバッハ会長は「若者人気」を重視してスケートボード、サーフィンなど新しいスポーツの採用を先導してきた。パリ五輪のブレイキン会場で満足そうな笑みを浮かべていたバッハ会長の後任次第では、若者を意識した改革路線は続く。

 多くの五輪競技は金メダルが最大にして唯一の目標で、五輪から外れれば死活問題。しかし、ブレイキンは違う。揺るぎないカルチャーがあるからこそ、スポーツとしても成長し続けられる。それでも、五輪の力は絶大。中には「五輪の金メダル」を目指してダンスを始めた子どもたちもいるはずだ。

 五輪ブレイキンは今後、どのような道を歩むのか。このまま五輪から離れるのか、復帰してスケートボードやサーフィンのように正式競技に「昇格」するのか。五輪とブレイキンのストーリーは、まだ終わっていない。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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