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創設4年目、変わるリーグワンの現在地 新システム導入で変化…今季はワンサイド減、今後はカタカナ選手増?

国内ラグビー最高峰を謡う「NTTリーグワン」は、上位12チームによるディビジョン1が1月19日までに5節を終えた。4シーズン目の今季からリーグ側が設けた「第2フェーズ」へと突入したシーズンの序盤戦は、埼玉パナソニックワイルドナイツが全勝を守り、リーグ初の連覇に挑む東芝ブレイブルーパス東京と、王者に土を付けた静岡ブルーレヴズが4勝と上位につける一方で、上位下位の実力差が縮まり接戦が増加するなどリーグ自体の競技力アップを印象付けた。集客面では昨季比で苦戦も強いられながら、開幕節で昨季以上の観客数を記録するなどポジティブな要素もあった。クロスゲーム増加の背景にあるものは何か、観客動員や、新規約、スマートマウスガードなどの新たなシステム導入が、リーグ序盤戦にどんな変化をもたらしているのかを検証する。(前後編の前編、文=吉田 宏)

1月19日までに5節を終えたリーグワン、全勝を守っている埼玉パナソニックワイルドナイツ【写真:Getty Images】
1月19日までに5節を終えたリーグワン、全勝を守っている埼玉パナソニックワイルドナイツ【写真:Getty Images】

ラグビーライター・吉田宏氏のリーグワン検証/前編

 国内ラグビー最高峰を謡う「NTTリーグワン」は、上位12チームによるディビジョン1が1月19日までに5節を終えた。4シーズン目の今季からリーグ側が設けた「第2フェーズ」へと突入したシーズンの序盤戦は、埼玉パナソニックワイルドナイツが全勝を守り、リーグ初の連覇に挑む東芝ブレイブルーパス東京と、王者に土を付けた静岡ブルーレヴズが4勝と上位につける一方で、上位下位の実力差が縮まり接戦が増加するなどリーグ自体の競技力アップを印象付けた。集客面では昨季比で苦戦も強いられながら、開幕節で昨季以上の観客数を記録するなどポジティブな要素もあった。クロスゲーム増加の背景にあるものは何か、観客動員や、新規約、スマートマウスガードなどの新たなシステム導入が、リーグ序盤戦にどんな変化をもたらしているのかを検証する。(前後編の前編、文=吉田 宏)

 ◇ ◇ ◇

 4シーズン目のリーグワン(ディビジョン1)で“地殻変動”が起きている。各チーム18試合を戦うレギュラーシーズンの序盤戦を終えて、先ず目を見張るのは接戦の増加だ。実際のスタジアムで、そして中継で観戦したファンも実感した方が多いとは思うが、ゲームのスコアからも変動が見て取れる。開幕節の全6試合で浮かび上がった興味深い数値を、昨季開幕と比較しておこう。

【リーグワン(ディビジョン1)開幕節の得失点差別試合数】

  24-25年 23-24年
7点差以内 4 2
14点差以内 1 1
それ以上 1 3

「それ以上」と分類した試合の得失点差も、昨季は65点差、41点差という大差の試合が目立ったのに対して、今季は埼玉WK-東京サントリーサンゴリアスの21点差(33-12)が最も点差が開いたゲームだった。ワンサイドゲームが大幅に減少した見応えのある開幕節だった。

 昨季王者BL東京のNo8リーチマイケル主将は、既に開幕前の練習試合の時点で「厳しい試合が増える。どのチームもレベルが高く油断できない」と語っていたが、開幕戦では、その指摘通り昨季4位の横浜キヤノンイーグルスを28-21でかろうじてしのいでいる。このような傾向は第2節でも変わらなかった。開幕節同様に得失点差をみると、昨季が7点差以内3、14点差以内1、それ以上が2試合だったのに対して、今季は7点差以内3、14点差以内0、それ以上が3だった。わずかながら昨季のほうが“詰まった”スコアが多いように見えるが、「それ以上」の試合をみると、昨季は75、49点差と大差のゲームが多く、共に敗者が無得点だったのに対して、今季は53、43、18点差だ。5節終了時のトータルでも接戦の傾向が見られる。

【リーグワン(ディビジョン1)第5節までの得失点差別試合数】

  24-25年 23-24年
7点差以内 13 11
14点差以内 6 4
それ以上 11 15

 大幅とは言えないかも知れないが、いわゆるワンサイドゲームが減少してクロスゲームが増えている。王者・BL東京は第4節でもディビジョン1に昇格したばかりの浦安D-Rocksとも22-14の接戦を強いられたが、混戦模様を予言していたリーチは、苦戦の理由をこう話している。

「コーチングとか分析とか、いろいろ理由はあると思います。D-Rocksにもグレイグ・レイドロー(ヘッドコーチ、元スコットランド代表SH)のような経験値が高く、ノウハウも持った指導者がいるし、他のチームにも優れたコーチが揃っている。それが1つかなと思います」

 浦安DR戦の苦闘は、BL東京がSOリッチー・モウンガ、FLシャノン・フリゼルという大駒を欠いた影響もあったはずだ。だが、チームはこの2人が復帰した翌第5節で、昨季8位の静岡BRに28-34と敗れて、公式戦では昨年3月以来の黒星を喫している。リーチが語ったように、下位チームでも、しっかりと質の高いコーチングが落とし込まれているのは間違いないだろう。そして、東海大時代からBL東京、日本代表とリーチと共に戦ってきた同期のベテランPR三上正貴は、盟友とは異なる視点でリーグの変化を指摘する。

「1つには、選手の移籍(の活性化)で、様々なチームのいい文化が、他チームにも広がっているんじゃないか。例えば中尾(隼太=SO)が三重(ホンダヒート)に今季移籍したことで、ウチのいいものが共有出来ているのかなと思うんです。以前ならいいチームだけが共有していたものが、他のチームにも広がっている。海外の選手が来たり、いい補強が出来ているとは思いますが、それ以上にチームの文化って大切だと思います」

 15人という、球技の中でも多くの選手が、今の時代は緻密な戦術を共有して戦うラグビーだからこそ、仲間のプレーの傾向や癖、人間性まで理解して連携を深めて戦うこと、そしてチームが何を目指すのかというチームカルチャーが重要だ。三上の言葉には傾聴するべきものがある。戦術・戦略も然りだが、発足から4シーズンという時間をかけて、リーグ発足時には強化に出遅れたチーム、下部リーグ所属で競技レベルが低かったチームが、戦力、戦術の進化と同時に、勝つためのカルチャーも吸収、構築し始めたことも接戦の増加に繋がっているはずだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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