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“超速”第2次エディージャパン1年目の検証 「世界トップ4と差が…」4勝7敗、4つの苦戦の理由と強化戦略の考察

ラグビー日本代表は秋のヨーロッパ遠征を終えて11月26日に帰国。9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ体制での1シーズン目を終えた。「超速ラグビー」を掲げて挑んだシーズンだったが、ツアー最終戦となった同24日(日本時間25日)のイングランド代表戦は14-59と完敗に終わり、テストマッチは通算4勝7敗と厳しい結果に終わった。27年の次回ワールドカップ(W杯)で目指す19年大会以来のトップ8奪還は出来るのか。大敗で終わったイングランド戦、そしてシーズンを通して見えてきた第2次エディージャパンが勝つための課題、そして強化戦略を考える。(取材・文=吉田 宏)

イングランド代表戦は14-59と完敗に終わったラグビー日本代表【写真:Getty Images】
イングランド代表戦は14-59と完敗に終わったラグビー日本代表【写真:Getty Images】

「超速ラグビー」を掲げて9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズHC

 ラグビー日本代表は秋のヨーロッパ遠征を終えて11月26日に帰国。9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ体制での1シーズン目を終えた。「超速ラグビー」を掲げて挑んだシーズンだったが、ツアー最終戦となった同24日(日本時間25日)のイングランド代表戦は14-59と完敗に終わり、テストマッチは通算4勝7敗と厳しい結果に終わった。27年の次回ワールドカップ(W杯)で目指す19年大会以来のトップ8奪還は出来るのか。大敗で終わったイングランド戦、そしてシーズンを通して見えてきた第2次エディージャパンが勝つための課題、そして強化戦略を考える。(取材・文=吉田 宏)

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 トゥイッケナムでの大敗から2日。帰国した東京・羽田空港でエディーが報道陣に対しての総括ブリーフィングを行い、試練のシーズンを振り返った。

「1年間を振り返って明らかなのは、世界トップ4のチームと我々の間にはギャップがあるということです。しかし、イングランド戦やフランス戦のような厳しい試合を重ねることが、我々には必要な経験です。50点差をつけられたことも、こうした経験、学ぶことでしか強くなることは出来ません。今後のチャレンジとしては、選手たちがいかに早く学ぶことが出来るかに尽きると思います」

 今季テストマッチ11試合の平均得点27、失点39.5という数字が苦闘を物語る。対戦相手の世界ランキングを見ても、勝てた相手は同等ないしは下位チームで占められ、世界トップ10クラスには完敗続きで歯が立たないのが現在の実力だ。チームが掲げた「超速」というアタックを重視したスタイルでの得点力不足、そしてテストマッチでは容易に勝てない程の大量失点と、攻守に課題を残したままシーズンを終えた。

 ファン心理を考えれば、勝てないチームへの落胆や苛立ちもあるだろう。期待する結果が出ないことへの不満もあれば、ゲーム、プレーの質が上がってこないことへの憤りもあるはずだ。その一方で、勝てない現況だけを論うだけでいいのかという疑問も浮かぶ。ブリーフィングの席で、エディーは報道陣にこんな言葉を投げかけている。

「皆さん、いかがでしょうか。イングランド、フランスに簡単に勝てると考えていたのでしょうか。現実的にならないといけません」

 エディー自身がどんな強豪相手にも戦前は常に「勝つ」と言い続けてきたことを踏まえれば矛盾しているという解釈も成り立つ。だが、ラグビーの取材を続けている者なら誰でも理解しているはずだが、トップレベルのテストマッチで「勝てない」「勝たない」と話す指導者も選手もいない。字義通りの勝ち負けという話なら不誠実な発言だという理屈もあるが、どんな強豪相手でも、「いい試合をしたい」ではなく本気で勝つ決意が無いままテストマッチを戦う意味はない。ラグビーのチーム強化の観点からは、やはり指導者は「勝つための試合」をチームに求めるはずだ。

 同時に、第2次エディージャパンが始動して、幾度かのメンバーの入れ替えが行われる中で、その顔ぶれと指揮官自身の発言からは通常の世代交代以上に大きく若手起用に舵を切っているのは明らかだ。2023年W杯のチームから日本代表は急速に戦闘力を下げているが、昨年までの平均30歳というメンバーを27年まで引っ張るのは不可能だ。新チームの初陣となった6月のイングランド戦の先発メンバーの総キャップ数169は、1人平均11.3キャップという若さだった。先発FLリーチマイケル(東芝ブレイブルーパス東京)の84キャップを差し引くと、さらに経験値の低い編成だったことが判る。

 W杯で決勝を争うレベルでは総キャップ数600以上の経験値が必要ともいわれる中で、この布陣で世界のトップ10クラスの国と互角に渡り合うためには、1シーズンでは済まないほどの時間と経験値が必要なことは、少なくとも我々報道陣も含めて近くでチームを見続けてきた者なら理解していたはずだ。若いチームが1試合ごとにどんな成長を見せるのかという期待感はあった一方で、選手には失礼だが、わずか1シーズンの中で、今季対戦してきたイングランド、ニュージーランドら強豪勢と接戦を演じるほど急速に進化出来るとは到底思えないのも、チーム始動の段階から想定内だっただろう。

 試合ごとにチームの仕上がり具合が乱高下している不安定さはある。イングランド戦後のCTB梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)の言葉からは、選手にも困惑、不安があることも読み取れる。

「(イングランド戦を含めたここまでの試合で)ディフェンスでは、正直どこでボールを奪うかというプランがあまりなくて、相手のエラー待ちになっているところがある。ディフェンスでゴールが見えないと感じています。自分たちで感じているところは色々あってコーチにも話しているが、(コーチから)降りてきたものでプレーしている感じです」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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