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ラグビー日本、世界最強への挑戦 番狂わせに耽々「NZと対戦するなら今だ」21年前に起きた“事件”再現へ――エディー・ジョーンズ独占インタビュー

「このチームと対戦するなら今だ」 エディーが21年前に起こした“事件”

 このようにNZの状況を語った上で、26日の対戦についてはこう言い切った。

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「このチームと対戦するなら今だなと思います」

 日本代表に目を向けると、6月のチーム始動から「超速ラグビー」という従来以上に細部に渡り速さを求め、メンバーも大きく若返りをみせる、いわば発展途上のチームだ。ここまでのテストマッチ7試合は3勝4敗と負け越し、世界ランキングも12位から14位へと降下した。ゲームでのパフォーマンスをみても、速いテンポの攻撃で敵陣に攻め込みながら、攻め急ぎ、ミスを犯してスコアまで辿り着けない決定力不足を露呈。相手には1つのチャンスから得点を許している。若手を積極的に起用する中で、怪我などでその顔ぶれも刻々と変化していることもあり、持ち味でもある組織プレーの精度がなかなか上がらないのも苦闘の一因になっている。

 そんな状態で、過去W杯を3度制した強豪に立ち向かえるのかという厳しい目もある中で、エディーは耽々と番狂わせへの準備に着手している。

 遡ること21年。エディーが母国オーストラリアを率いた時に“事件”は起きた。03年W杯準々決勝で対戦が決まったが、下馬評では圧倒的にNZ優位。大会前の直接対決でも敗れていたこともあり、母国開催にも関わらずメディアとファンの期待感は高くなかった。だが、蓋を開けると、パス中心のアタックを積極的に取り入れたオーストラリアがNZに主導権を掴ませずに22-10と快勝。イングランド代表HC時代も、最強を誇った時代のライバルに1勝1分け1敗と渡り合った。日本が舞台となった19年W杯準決勝での19-7という白熱のバトルは記憶に新しい。

 過去の実績をみると「オールブラックス・キラー」でもあるエディーだが、では今回の一戦で、どこに相手の弱みと若いジャパンのアドバンテージポイントを見出しているのか。

「どんな素晴らしいチームにも弱みはあるが、オールブラックスには従来以上に明らかに無防備さがあると感じますね。ラグビーチャンピオンシップでも3度負けていますから」

 南半球4か国のトーナメントでは、アルゼンチンに敗れるなど3勝3敗で終えている。順位こそW杯王者・南アフリカに次ぐ2位を確保したが、2012年に4か国のトーナメントになってからNZが3敗を喫したのは史上初めての屈辱だった。参考まで最近のNZの年度別の平均スコアをみてみると下記のような変化がある。

▼年度別平均スコア(得点-失点)
年度 得点-失点
2022  33-21
2023  38-13
2024  29-23

※通常は2回戦総当たり(計6試合)。
23年大会はW杯開催のため1回戦総当たり制で各国3試合のみ
(数値は小数点以下四捨五入)

 数字に極端な悪化はないものの、22年シーズンはHC解任騒動が持ち上がるほど低迷していたことを踏まえると、今季の得点、失点とも褒められた数字ではない。エディーも触れているように、防御面での淡白さは、これまでのオールブラックスが見せてきたものとはクオリティーの違いは明白だ。日本戦直前というタイミングのコラムではあまり具体的な指摘は避けるべきだが、エディージャパンが“レイザーブラックス”の防御のポケットをしっかりと突ければ、スコアチャンスは増えてくるという期待感はある。

 さらに、エディーはこんな選手との会話からも、今の若いチームが打倒オールブラックスのために必要な要素を指摘する。

「(宮崎合宿中の)今朝、立川(理道、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)と話をしたんです。2013年のオールブラックス戦(6-54で敗戦)を経験したのは、今のチームでは彼だけなので、試合のことを聞いてみると『自分たちが、NZのプレーを見ている観客のような感覚だった』と話していた。今回は、最初からNZと戦うというマインドをしっかりと持って、相手にプレッシャーを掛け続けることが出来ればチャンスは生まれてくるかなと思います。日本ではオールブラックスは神様のような存在。私が初めて日本に来た時は、ファンが日本代表よりも黒いジャージーを着ていた。そういう環境で育った選手たちに、どのようにして自分たちの信念を失わずに戦うか、そして観客がニュージーランドじゃなく日本を応援するような環境に持っていくことが出来れば、選手は試合と勝つことに没頭出来て、チャンスが生まれてくると思います」

 日本代表もファンも、世界のトップネイションズと渡り合い、勝とうという欲望よりも、まだ憧れのほうが強かったのが2013年だった。そこから、どんな強豪相手にも本気で勝とうというマインドセットを選手全員に植え付け、臨んだのが2年後の南アフリカ戦であり、W杯イングランド大会だった。その意識の変化をいまの若い日本代表でも引き起こして26日の神奈川・日産スタジアムのピッチに立つことが出来れば、過去7戦全敗の「王国」を揺るがす可能性が見えてくる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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