プロを「クビになった僕」が“優勝請負人”に 元オリ武田健吾、30歳の今も社会人野球で続く進化
戦力外になって考えた「何かを変えないとそのまま」
「何かを変えないとそのままじゃないですか。三菱ではみんな、すごくウエートをするんです。僕もイチから変えてやろうと思って」。効果はパワーアップだけではない。体のキレが増し、ボールをより引き付けて打てるようになった。対応力が増すと、凡退の内容も変わった。
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プロでも打撃が課題だと頭にはあった。ただ取り組みとしては「マシンをたくさん打とうとか、そんな感じでした」と、技術にばかり目が向いていたという。その土台となる肉体の改造に思い至ったのは、年に2回の全国大会とその予選に向けてピークを作っていく社会人野球のカレンダーが性に合ったからだ。「プロでは毎日が、勝たないといけない試合です。そんな中でトレーニングに力を入れて、体を張らせるわけにはいかないという考えもありました」と、当時の苦悩を口にする。
プロアマの関係改善もあり、プロ野球を去った武田のような選手が社会人野球に飛び込むのはもはや珍しくなくなった。今大会でも、昨年までは巨人のスカウトだった桜井俊貴投手(ミキハウス)や、阪神でプレーしていた北條史也内野手(三菱重工West)が話題を集めた。今後も続く選手が現れるはずだ。
「僕はこれからの選手にも社会人野球を勧めたいと思っています。プロにはなかった面白さもありますし、もっと来てほしいなと」
プロを離れてからも、野球がうまくなれる場所があるのが日本野球の深み。実は晩成型だったのかもしれない武田の歩みは、そんなことを思わせてくれる。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)