プロを「クビになった僕」が“優勝請負人”に 元オリ武田健吾、30歳の今も社会人野球で続く進化
プロでは守備の人…今年打撃で感じた「初めての感覚」
プロ野球時代とはプレースタイルも大きく変わった。大舞台を駆ける喜びなのかもしれない。都市対抗野球では、この世界でキャリアを重ねてきたベテランも感情をむき出しにする。そんな空気感が合った。
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「周りのプレーを目にすると自分もノってくるというか、オラーッと叫んだり。プロではあまりやらなかったんですけど、30を過ぎたおじさんが雄叫び上げてて、カッコいいなと。今はむちゃくちゃ好きですね」。そして、プレーの中身でも日々、新たな自分を発見できているという。
「社会人に来てから、年々バッティングには手ごたえが出てきているんです。今が一番いい状態というか。でももっともっと進化したいな、できるなとも思っていて……」。
東京ガスとの準決勝、3-1とリードした8回に放ったダメ押し弾はその結晶だった。カットボールにバットを合わせると、打球は右翼席の中段まで飛んだ。「初めて打ったくらいの感覚でした。これまであっちの方向に飛ぶことはなかったんですが、打感も打球も入ったなという手ごたえがあったんです」。逆方向に自分でも驚く打球が飛んだ。思わず飛び跳ねながら、右手を突き上げダイヤモンドを一周した。
プロでの武田は守備の人だった。オリックスでレギュラーをつかみかけた年もあったが、通算403試合出場で打席は530しかない。高い身体能力を生かした好守は今も大きな武器で、この大会でも何度も投手を救った。それが打撃でも“優勝請負人”のような働きを見せられているのは、これまで本格的に取り組むことがなかったウエートトレーニングの成果だという。