「人間は罪とともに生きている」 金メダル→世界一と歩み、「人間の弱さ」を悟った人生とスポーツの哲学――ボクシング・村田諒太
スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。
「シン・オリンピックのミカタ」#101 連載「なぜ、人はスポーツをするのか」第6回
スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。
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今回は連載「なぜ、人はスポーツをするのか」。現役アスリートやOB・OG、指導者、学者などが登場し、なぜスポーツは社会に必要なのか、スポーツは人をどう幸せにするのか、根源的価値を問う。第6回は2012年ロンドン五輪のボクシングミドル級金メダリストで、プロでも世界ミドル級王者になった村田諒太氏。強さを証明したくて始めたボクシングを通じ、「人間とは何か」を悟った38歳の考えとは。(取材・構成=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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スポーツ自体に意義を見出すのは難しい。だって、アスリートはチヤホヤされるから。今の時代はそこに価値がつけられますよね。価値は自分が決めるものではなく、周りが決めるもの。自分がいくら価値があると思っても、周りに価値がないと思われることもある。自分で価値があると思えるものの中で生きていけるのは幸せですし、自分がつくる価値の方が大事だと思います。
だから、無理に価値をつけようと思う必要はない。スポーツ自体に価値なんてないのだから。あるとしたら、それ自体を楽しむことでしょう。そこに大人が勝手に価値をつけ、お金が生まれるというだけの話。はっきり言うと、今のスポーツ界で周りがつける価値はお金と栄誉です。でも、それは別に悪いことではありません。
お金にならない競技でも、誰かに求められれば栄誉が得られます。競技自体が単純に楽しいのなら、それは至福の喜び。でも、なかなかその領域にたどり着くのは難しい。結局は認められることが目的になってしまうから。
他者と競い合うことで自分を高めていけるのはいいことだと思いますが、何をもって高めていると言えるのでしょうか。結局、人と比べて「自分の方が凄い」という優越心を得るだけだとしたら、それって必要なのかな。だから、スポーツは娯楽に過ぎない。スポーツが栄えてきた国は食うに困らなくなった国。暇だからスポーツができます。
余暇の中でいろいろな選択肢があり、なぜスポーツを選ぶのか。テレビに出て「なんかカッコいい」「なんとなく楽しそう」「女の子にモテる」とか、子どもが選ぶ理由は些細なことだと思います。
僕がボクシングを始めたきっかけは、中学2年の時。喧嘩に勝ったのに、次の日に学校に行ったら自分が負けたことにされていた。噂話に腹が立って「俺が一番強いところ見せたるわ」と思ったからです。
強いか弱いかわからないのに、集団になって強ぶっている奴が大嫌いでした。集団になって強くなった気になっている先輩に「一人やったらほんまに強いんか?」と。それはいまだに変わらない。最初は、僕にとってスポーツはそんなもんでした。