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第2次エディージャパン5試合の検証 若手起用も宿題山積み…対戦国の弁から透けた超速ラグビーの課題

筆者の問いに返ってきたエディーの答えとは

 2015年までの第1次エディー体制では、小野晃征(現東京サントリーサンゴリアスアシスタントコーチ)らに次ぐ若手SOとしてプレーしていた田村だが、19年大会では中心選手として日本代表初のベスト8進出を牽引した。23年大会は選外だったが、所属する横浜Eでも、「超速」に通じるような速い展開でのアタックを指揮するゲームメーカーとして才覚を輝かせる。その判断力の高さは、とある代表経験も豊富なインサイドCTBが「優さんがゲームの中で、瞬間瞬間にみせる判断って、そのほとんどが正解なんです」と語るように、そのゲーム感覚や、相手の防御のギャップをラン、パス、キックを駆使して突く勝負勘はいまだ衰えを知らない。

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 勝負所での防御、プレースキックの不安定さなどマイナスポイントもある田村だが、横浜Eでのプレーぶりをみても、自分の足りない部分を補おうという積極的な姿勢も見せてきた。そんな、円熟期に入った司令塔を、若いチームと“噛合わせる“ことで、いまだに迷走するシーンもある「超速」を加速する一助になるのではないかという意味で田村の名を挙げたのだが、指揮官は「田村個人へのコメントは差し控えるが」と選考外の個人名には触れない前置きをした上で、こんな考え方を示している。

「検討する余地はあると思う。正しい、適したシニア選手を呼ぶことに関しては余地は間違いなくあります。現状のチームの中でリーチはFWの替えが効かないようなシニア選手ですが、BKでも松田、立川(理道、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)がそういう形で、チーム内でも大きく貢献してくれてるし、存在感のある選手です。他のシニア選手を、そういう役割で呼ぶこともあると思います」

 エディーの指摘通り、リーチマイケルが名実ともピッチの上のリーダーを託されたのは、若いチームをオーガナイズするには適材だからだ。だが、5試合を実際にスタジアムで観てきて実感するのは、アタックに強みを持ちながら、攻撃を継続しながら仕留め切れない戦いぶりの中で、BKのアタックを状況を読み取りながらコントロールするゲームメーカーの物足りなさだ。

 リーチにBKラインのオーガナイズまで求めるのは無理な話ではあるし、BKで挙げた2人もイタリア戦では立川はメンバー外、松田も復帰したばかりで、まだまだ自分自身の判断力、プレー感覚を磨く段階だ。スコアまで持っていけるようにゲームを組み立てていくためには、やはりアタックラインをコントロールできる選手をBKラインの要に位置するSOに置くことが、若い素材のポテンシャルを引き出すためにも重要なはずだ。

 個人名は避けたエディーだが、インターナショナルプレーヤーへと成長を続けていた時代の田村を代表に呼び続けた経験から、この司令塔の持つ才能も欠点も、我々以上に熟知しているはずだ。サントリーのアドバイザー時代にも、成熟した田村のプレーぶりは見続けているだろう。指摘してきたように、第2次エディージャパンは生みの苦しみの最中にある。時間をかけて熟成させていく段階なのは明白だが、その未熟なチームを、より早い段階で戦闘能力の高い、いまの日本代表でいえば、確実にチャンスをスコアに繋げるチームに進化させるためには、豊富な経験とボールを動かす才覚を持つゲームメーカーの存在が大きなインパクトになるはずだ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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