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第2次エディージャパン5試合の検証 若手起用も宿題山積み…対戦国の弁から透けた超速ラグビーの課題

9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が率いた新生ラグビー日本代表の初めてのシーズンは、テストマッチ3戦全敗(ノンテスト戦1勝1敗)に終わった。7月21日に札幌で行われた最終戦では、イタリアに14-42と完敗するなど結果を残せなかった。指揮官が就任と同時に掲げた「超速ラグビー」で、母国オーストラリアが舞台となる2027年次回ワールドカップ(W杯)での8強突破というゴールへ辿り着けるのか。札幌までの戦いぶり、そして23日の総括会見から、第2次エディージャパンが、いま立たされている座標が浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

テストマッチを3戦全敗で終えた新生ラグビー日本代表【写真:Getty Images】
テストマッチを3戦全敗で終えた新生ラグビー日本代表【写真:Getty Images】

サマーシリーズはテストマッチ3戦全敗(ノンテスト戦1勝1敗)という結果に

 9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が率いた新生ラグビー日本代表の初めてのシーズンは、テストマッチ3戦全敗(ノンテスト戦1勝1敗)に終わった。7月21日に札幌で行われた最終戦では、イタリアに14-42と完敗するなど結果を残せなかった。指揮官が就任と同時に掲げた「超速ラグビー」で、母国オーストラリアが舞台となる2027年次回ワールドカップ(W杯)での8強突破というゴールへ辿り着けるのか。札幌までの戦いぶり、そして23日の総括会見から、第2次エディージャパンが、いま立たされている座標が浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

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 山積みの宿題を残して、日本代表が“サマーシリーズ”を終えた。シーズンを総括する会見で、エディーが船出のシーズンを振り返った。

「非常に厳しいスタートになったのは否めません。負け試合(イングランド戦17-52)から始まると、どうしても厳しい戦いになってしまう。自分としても結果はとても悔しく思っているが、間違った方向に進んでいるとは思っていない。時間はとてもかかるものです。新しいチームへ変革していくという過程では、どうしても若い選手の育成は必要だし、そこに関しては時間と忍耐、根気強く続けていくことが大事だと思います」

 代表戦は結果が全てという観点では不満の残るスタートだが、チームの戦いぶりを見れば、完成度ではまだまだ足りないものが山積みなのも事実だ。エディーが語るように、大学2年生のFB矢崎由高(早稲田大)、入社1年目のPR為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)や、今季が代表デビューとなったHO原田衛(東芝ブレイブルーパス東京)ら若手を積極的に起用する未来への“投資”にも取り組んできた。再始動まで2週間のオフを予定している、8月開幕のパシフィックネーションズ杯(PNC)への準備時間は潤沢ではないが、チームがどこまで“生みの苦しみ”を克服できるかが注目だ。

 あらためてイタリアとの最終戦を振り返ると、夏のシリーズで最も厳しい敗北だった。ジャパンXV(フィフティーン)戦も含めた全5試合に先発したHO原田がイタリア戦後に「イングランドより強かった」と呟いていたが、それもあながち誤りではない。世界ランキング5位の強豪イングランドだが、夏のシーズン初戦で日本まで移動して、暑さが厳しい東京で、未知数の多い新生日本代表と戦ったのに対して、敵地の厳しい環境でサモア、トンガとフィジカルゲームを続けてきたランク8位のイタリアほうが、チームの完成度、そして日本の「超速」対策も十分に準備して挑んできた。

 日本は、ここまで善戦をみせていたスクラムを強烈に押し込まれ、得点の起点としたい敵陣でのラインアウトで何度もクリーンキャッチに失敗。セットプレーの成功率はスクラム25%、ラインアウトは74%に止まった。接点での球出しでも、相手の重圧に自分たちの素早い球出しが出来ない。その結果、アタックのテンポが上がらず、ここまで苦闘の中でも見せてきたループやアングル変化を交えたアタックも影を潜めた。奪った2トライは、ともにインターセプトなどアクシデンタルな幸運からマークしたもので、イタリアにとっても自分たちの防御システムが崩された失点ではないため、深刻な痛手にならなかった。スピード感に溢れたゲームを見せたのは、むしろ対戦相手のほうだった。

「イタリアの一貫性が自分たちよりも何枚も上手だった。自分たちはハンドリングエラー、ラインアウトのミスなどでフィニッシュ(得点)に至らなかった。残念ながら、これがいまの現状です。正直なところ、まだまだ我々としては課題が多く積み重なっている。一貫性を積み上げることが重要だと思っています」

 負けず嫌いのエディーも、試合後の会見で潔く完敗を認めている。その一方で、快勝したイタリアのゴンサロ・ケサダHCのコメントからは、いまの日本にどう戦えば勝てるのか、言い換えれば日本の課題が浮かび上がる。

「(24-7と圧倒した)前半については、私たちの計画通りになりました。計画というのは、1つは、まず日本にボールを持たせないこと。持たせてしまうと日本はスピードに乗ってくる危険なチームです。だから、自分たちでボールをキープしようと考えていたのです。それが前半上手く出来ました。2つ目が日本にプレッシャーを与えることです。そうすることでボールの動きがスローになり、日本の流れを遅らせることも上手くいきました。コンタクト、コリジョンのシーンで、ボールがスローダウン出来たのです。自分たちがラインスピードをコントロールして、日本のプレーの流れを遅くしようという思惑を、しっかり実現出来ました」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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