新生ラグビー日本、勝ち切れない「超速ラグビー」 人口400万人、東欧の小国ジョージアから学ぶもの
13人での戦いで露呈したゲームコントロールの必要性
日本代表が何かを怠っていたとは思わないが、その一方で、ジョージアが仙台で見せたあの真摯さ、筋骨隆々の肉体に自ら鞭を討つように密集戦で体を張り、モールに頭を突っ込んで押し込み、スピードに乗る日本のアタックを追いすがるようにしてでも止め続けた姿は勝者に相応しいものだった。
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では、日本はどんなパフォーマンスを見せたのか。立ち上がりは、エディーが「これ以上ない仕上がり」と断言した通り、ジャパンXV(フィフティーン)戦も含めた今季の4試合で最高のアタックをみせた。エディーが掲げる「超速ラグビー」で定番となり始めたSHからのループ攻撃に加えて、この日はSOが仕掛けるループも使うことでバリエーションを広げ、アングルを変えたランナーのライン参加など、防御のベクトルを定めさせない多彩な攻撃で、無骨なジョージア防御を崩せる可能性を見せていた。
とりわけSH齋藤直人(トゥールーズ)の球捌きは過去にない程のアグレッシブさを見せ、攻撃をパスワークで加速させていた。エディーも、齋藤の序盤のプレーぶりには「時間帯により難しい状況もあったが、序盤のプレーに関しては思い描いた超速の球出しをしてくれた」と認めている。だが、めざすスタイルを80分間貫けないのが4試合で共通する課題に浮上する。
ジョージア戦では、相手が真摯に、直線的なラグビーを徹底してきた中で、そのスタイルに日本も浸食されるように巻き込まれ、時間を追うごとに序盤に見せたような多彩なアタックが薄らいでいった。この日の戦いぶりは、攻めても効率のいいスコアが出来なかった今季の1、2戦目に似た“攻め急いだ”ラグビーを見せていた。22歳ながら、いまや主要メンバーに定着するLOディアンズは、チームで最も体を張るポジションを担いながら、この日のチームの苦境を冷静に受け止めていた。
「いちばん上手くいかなったところは、アタックで自分たちもジョージアのようにフィジカルで戦おうというマインドセットでプレーし過ぎてしまった。我慢して我慢してアタックをして、無理矢理アタック、アタックという感じだった。もうちょっといい方法があったと思いますね。とくに前半のトライを獲った後に、フィールドの真ん中でずっとアタックしていた。あまりゲインはしていないし、下げられてもなかったけれど、裏にキックしてしまい、そこからディフェンスにまわってしまった」
ワーナーが指摘したシーンは、前半13分のプレーが如実に示している。敵陣22mライン前まで攻め込んだ日本は、速いパスアウトから左オープンに仕掛けた。だが、素早い展開にジョージア防御が対応できずに5対4と数的優位な状況を作り出せながら、ショートパントを蹴って、相手選手に容易にフェアキャッチされトライチャンスを手離している。
蹴った選手は、相手防御の裏に大きなスペースが空いているのを好機と見て、パスを繋ぐより蹴ったほうがスコア出来る可能性が高いと判断したのだろう。だが、ここで攻撃権すら失ってしまったことで、前半8分の初トライに続くスコアが出来なかっただけではなく、浮足立っていたジョージアに精神的な余裕を与えてしまったという意味でも、勝負の綾になったプレーだった。
この日の日本の戦いぶりを見てみると、最高の滑り出しに自信を深め、さらにジョージアが強みのフィジカルを前面に押し出したスタイルに対抗するように、自分たちもこだわる「超速」で勝負しようとしていた。この意識自体は誤りではないだろう。だが、ワーナーが指摘した通り、「無理矢理」勝負を急いだことが、結果的に仕留め切れないという、イングランド戦、マオリ・オールブラックス第1戦と同じ轍を踏んでしまったようにみえた。マオリ第2戦へ向けては修正力をみせて、戦況に応じたプレーの選択でトライを奪ったが、ジョージア相手には組織としての未熟さを再び露見させていた。
この状況で痛感させられるのは、ゲームメーカーの不在だ。ピッチに立つ15人の中で、状況を的確に読み取り、最適なプレーを選択する役割だが、先発したSO李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)は、プレー時間は短いながらも昨秋のワールドカップ(W杯)も経験して代表キャップも12を数えるが、エディーが「経験値を積んでいく選手」と評価するように、これからの選手だ。後半出場の山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)も、国内リーグでのファンタジスタぶりはファンの知るところだが、国際経験はまだスタートしたばかりという段階だ。リーチマイケル(BL東京)という経験豊富なリーダーはいるが、リーチをサポートしながらBKの中でリーダーシップを発揮する選手が不在なのが、新生エディージャパンの実態と考えていいだろう。