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新生ラグビー日本、勝ち切れない「超速ラグビー」 人口400万人、東欧の小国ジョージアから学ぶもの

エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が復帰して2試合目のテストマッチだったジョージア戦(13日)も23-25と苦杯に終わったラグビー新生日本代表。6日に行われたノンキャップ試合で、史上初めてマオリ・オールブラックスに勝利。エディーの掲げる「超速ラグビー」に手応えを掴んで臨んだテストマッチで、世界ランキングで下位の相手に残り5分でひっくり返された。日本選手の強みをさらに深めた「超速」で勝ち切れないのは何故か。ジョージア戦の戦いぶり、敗戦後の選手の言葉から苦闘の要因が見えてくる。(取材・文=吉田 宏)

2試合目のテストマッチで苦杯、ラグビー日本代表がジョージアから学ぶものとは【写真:Getty Images】
2試合目のテストマッチで苦杯、ラグビー日本代表がジョージアから学ぶものとは【写真:Getty Images】

2試合目のテストマッチで苦杯 第2次エディージャパン好発進を失速させたものとは

 エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が復帰して2試合目のテストマッチだったジョージア戦(13日)も23-25と苦杯に終わったラグビー新生日本代表。6日に行われたノンキャップ試合で、史上初めてマオリ・オールブラックスに勝利。エディーの掲げる「超速ラグビー」に手応えを掴んで臨んだテストマッチで、世界ランキングで下位の相手に残り5分でひっくり返された。日本選手の強みをさらに深めた「超速」で勝ち切れないのは何故か。ジョージア戦の戦いぶり、敗戦後の選手の言葉から苦闘の要因が見えてくる。(取材・文=吉田 宏)

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 夏を迎えようとしている杜の都でも“桜”のジャージーは五分咲きに終わった。仙台では16年ぶりのテストマッチ。最後まで勝負の行方が分からない熱闘にスタンドも沸いたが、第2次エディージャパンのテストマッチ1勝目には3点及ばなかった。

「がっかりしました」。日本語でこう会見を始めたエディーは、感情を押し殺すような神妙な面持ちで苦闘を振り返った。

「もちろん結果は悔しいです。ジョージアが、やるべきことをしたことが、勝ち得た結果だと思う。私たちは、試合のほぼ60分間を14人でプレーする難しいゲームだったし、最後の10分は、さらにもう1人を失う状況でした。これが敗因ですが、その中でも、やはり力不足の面が見られたと思う」

 前半20分という序盤戦に、FL下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)が危険なプレーで10分間の一時退場となったが、処分中の再審議でレッドカードに変更された。14人での戦いを強いられる中で、さらに後半32分には自陣ゴール前での反則でLOサナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)も10分間の退場処分を受けると、そのPKからのジョージアFWの猛攻で23-25と試合をひっくり返された。

 世界ランキングは日本の12位に対してジョージアは14位。2つ下位の相手に、60分間を14、13人で戦い、2点差の敗戦。新チームを立ち上げたばかりで、1人平均11.1キャップという若い布陣を考えれば、そう悲観するべきではないとも解釈できる。ジョージアのゲームメンバー23人中14人はフランスリーグでプレーしている。だが、エディーが勝者を「やるべきことをして勝った」と称えたように、遂行力という視点で見れば、2つのチームには明確な差があった。

「今日代表デビューした2人を含めて、全員が自分たちのチームにプライドを持って戦いました。ミスはあったが、最後の最後まで戦うという姿勢、どうすれば勝てるかを考えながら戦い、決して諦めないチームです。もっと賢いプレー出来ればいいかも知れないが、選手の努力、戦いぶりには満足しています。400万人の国民を代表して戦うことに皆真剣です」

 元イングランド代表で、エディーの下でも同代表コーチを務めたジョージアのリチャード・コークリルHCの会見での言葉だ。東欧からやって来た挑戦者たちは、キックオフから伝統の戦い方を発散させた。決してスポーツ大国ではないが、柔道やレスリングなど格闘技では世界有数の選手を擁し、上半身の筋力、腕力は世界でもトップクラスのアスリートが揃う。その恩恵は、間違いなくこの国のラグビースタイルにも反映されている。最前線で体を張り続けた日本代表LOワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス)は、試合後に、強烈なフィジカルを前面に押し出して重圧を掛けてきた相手の破壊力を語っている。

「ジョージアはもともとレスリングの歴史がある国なので、1人ひとりが強いですね。いろいろな意味でなんですけれど、握力も強いし、体自体も強い。やり辛かったです。いままで対戦してきた相手の中でも、かなり強い」

 まだ13キャップのディアンズだが、すでにニュージーランド、フランス、イングランドら世界トップクラスの相手と対戦してきた。その経験を踏まえても、ジョージアはフィジカル面では手強い相手だと苦笑した。ジョージアがジョージアらしさを発散したのは、単なるパワーだけではない。そのひたむきさ、愚直さ、迷うことなく己の信じるものを貫く姿勢だ。肉体だけではなく、ハートの領域でも、日本代表に強烈なボディーブローを何度も食らわし、勝利をむしり獲った。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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