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2027年W杯へ芽吹くエディー・チルドレンの才能 課題露呈も…短期間で「目まぐるしい成長」評価された逸材

秩父宮をどよめかせたPR為房

 矢崎の走りに続いて、同じくイングランド戦で代表デビューのPR為房が秩父宮をどよめかせた。前半3分、敵陣での相手ボールスクラムでマオリのFW8人と互角に組み合うと、1分後の日本ボールスクラムを押し込み、反則によるPKを奪い取った。

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「マイボールの時は押そうと決めていました。(スクラムの)セットのところからしっかり組まないと押せないので、そこは意識していました。(マオリの)過去の動画も見ていて、結構高い姿勢だなと見ていた。低く組むのは得意なので、そこで勝てるかなと思っていました」
 
 その後もFW8人が、速いセットアップと背中を一枚の絨毯のようにフラットにして低く組むスクラムで相手に重圧をかけ、成功率86%と、マオリの80%を上回る数値を残した。今春明治大を卒業して、1週間前に初キャップを獲得したばかりとは思えない図太ささえ感じさせる為房だが、直接組み合った相手左PRについても大物ぶりをみせる。

「最初のスクラム組む時に相手の顔をみたら、違っていたんです。そこまで全然知らなかった。何で変わったんですか? 怪我ですか?」

「相手」と信じて準備をしていたのはオールブラックス57キャップの実力者ジョー・ムーディー。試合直前の練習で負傷して急遽メンバーが変更されたが、スクラムを組むまで気付かずプレーしていたのだ。その後も何度もスクラムを押し込んだ為末だったが、「残念ですね」と世界でも名立たるPRの不在をラッキーではなく、直接組み合って押し込めなかったことを悔しがっていた。一見するとパワー系の選手というイメージだが、この試合でのタックル回数は3位タイの11回すべてを成功と、献身的なフィールドプレーも魅力だ。

 イングランド戦でデビューしたFL山本も、為房同様に“ボールを持たないプレー”で持ち味を証明した。キックオフ直後の相手ラック防御から、先陣を切ってタックルに刺さると、4分には密集でボールに絡んで、日本ボールスクラムを勝ち取った。タックル回数は為房と同じ3位タイ。戦況が大きく相手に傾いた後半14分にも、日本陣で連続攻撃を仕掛けるマオリのラックに体を差し込むようにして相手の反則を引き出した。

 国際試合のFW第3列で、身長177cm、体重100kgは異例の小兵だが、この日も高いワークレートと地面に這いつくばるような低い姿勢で大きさに挑んでいた。アタックでも、イングランド戦での、相手のタックルをかいくぐるようにかわしてゴール前に攻め込んだランなど、異彩を放つ。

 為房らFW8人が反則を奪い取ったスクラムを起点に、この試合の初トライを奪ったのが共同主将を担うHO原田だった。ゴール前で押し込んだ密集から、相手防御に出来た一瞬の隙を迷わず突いて、相手SO、PRのタックルを受けながらゴールラインをこじ開けた。マオリに負けないフィジカルの強さを印象付けた原田も175cm、101kgとサイズは大きくないが、昨季リーグワンを制したBL東京でも見せた機動力、フィジカル、セットプレーの精度の高さを代表戦でも証明。防御でも、タックル回数で山本らを上回るこの試合トップの16回を数えた。

 29歳でバックアップメンバーからの初キャップに挑むLO桑野も、後半16分の自陣ゴール前でのジャッカルで窮地を救うなど、ショートレンジでのしぶといタックル、密集戦参加と運動量で気を吐いた。193cmの身長はLOとしての国際水準では小兵だが、ラインアウトも5回獲得とタイミングで高さに対抗している。亡き父に続く日本代表キャップを目指すWTBツイドラキは、前半18分にSO山沢からのキックパスを敵陣ゴール前で好捕して見せ場を作った。ゴールラインへ飛び込んだところを相手の好タックルに阻まれるなど若さを露呈したが、蹴った山沢が「もうちょっと前に蹴ってあげたら、あそこのプレッシャーもなかった」と悔やんだギリギリのプレーだった。

 ここまでピックアップした選手よりは“年長”ながら、イングランド戦で2キャップ目を掴んだWTB根塚洸雅(S東京ベイ)も高いワークレートで、敗戦の中で存在感をみせた。173cm、82kgと国内でも小柄なBKだが、ダイナミックなランをみせたFB矢崎とは対照的に、敏捷性を生かした細かいステップや、ボディーターンを使って相手をかわしながら前に出るスキルなどを駆使してボール保持時間を伸ばした。アングルを変えながらの積極的なライン参加や、キックチェイスも含めて、ポジションに関係なくチャンスボールを貰いに行くアグレッシブなプレーを続けた。

「ラインブレークでは今日も自分の持ち味を出せていたと思います。一瞬の加速だったり、アジリティ(俊敏性)という部分は、相手がデカいからこそ通用するというのは、この2試合をやってみて感じています。超速ラグビーというのは、仕事量が求められると思うので、自分のアジリティにプラスして、もっと体力をつけてタフな仕事をしていきたい」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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