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五輪絶望の今、桐生祥秀は3歳長男に伝えたい「負けは恥じゃない」 躓き続けた東京五輪後の3年間【日本選手権】

今夏のパリ五輪代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権最終日が6月30日、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた。男子100メートル決勝では、自己ベスト9秒98を持つ28歳の元日本記録保持者・桐生祥秀(日本生命)が10秒26(向かい風0.2メートル)の5位。個人種目でのパリ五輪出場は絶望的になった。躓き続けた東京五輪後の3年間。長男に伝えたいことがある。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

ゴール後に同組の選手と健闘を称え合う桐生祥秀【写真:奥井隆史】
ゴール後に同組の選手と健闘を称え合う桐生祥秀【写真:奥井隆史】

陸上日本選手権

 今夏のパリ五輪代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権最終日が6月30日、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた。男子100メートル決勝では、自己ベスト9秒98を持つ28歳の元日本記録保持者・桐生祥秀(日本生命)が10秒26(向かい風0.2メートル)の5位。個人種目でのパリ五輪出場は絶望的になった。躓き続けた東京五輪後の3年間。長男に伝えたいことがある。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 周りに望まれる結果ではなかったかもしれない。でも、全身全霊を懸けた事実が充実感をもたらした。

 雨中の男子100メートル決勝。桐生はスタート自慢の坂井隆一郎らに先行を許した。中盤から集団に迫ったが、最後は及ばず。坂井が10秒13で連覇を飾った。上位は0秒01差の超接戦。日本人初の9秒台を出した第一人者は優勝争いに加われなかった。

 4年ぶり3度目の日本一なら個人種目での五輪出場に可能性を残していたが、5位で絶望的になった。しかし、健闘した選手たちを労ったレース後、雨に濡れた表情は晴れやかだった。

「一生懸命、全力で走って負けました。もう、出し切りました。今の僕が出せるものは出した」

 今季は「3月から5月ぐらいまで練習できなかった」と体調不良で休みを入れながら調整。今月2日の布勢スプリント以降は問題なく過ごせた。熱もない、怪我もない。ピークを日本選手権に間に合わせることは叶わなかったが、不自由なく走れることが嬉しかった。

「凄くワクワクしましたね。こうやって日本選手権のスタートに立つのっていつぶりかなって。終わった後に『足、速くなりてぇ』と思いました」

 実はレースを迎える前、苦楽をともにしてきたコーチ、トレーナーと約束していた。「今日、どんな結果であろうと泣いちゃダメですよ」。その真意を明かす。

「チーム桐生はみんな泣き虫だから。いろんなところで男同士で泣いてきた。順位はもちろん悔しいですけど、コーチ、トレーナーとも『次、全員で泣く時は勝った時だ』と。こっから先の大会で、チーム桐生全員が『いやぁ、これはよかったな』って思えたら、もう残すことはないのかな」

 28歳。残りの競技人生を考える年齢になった。選手紹介で大きな拍手をもらうと、葛藤が生まれた。

「もう、自分だけの楽しみって何があるのかなって。情けないけど『今まで結構やったしな』とか思っていた。それでも、コーチやトレーナーが喜んでいる姿を見たい。今日のこの走りを終えて、『いや、俺、まだまだ個人で行きたいな』とも思いましたね。だから、変な言葉になっちゃいますけど、このレースは良かったのかなと」

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