昨春WBCで惨敗も…野球中国代表は「さらに伸びる」 西武で活躍、中国唯一の研究者が抱く将来の夢
プロ野球の西武では、中国唯一の野球研究者が活躍している。今季から1軍のバイオメカニクス担当兼アナリストとなった劉璞臻(りゅう・はくしん)さんだ。打者の動作分析という観点から、日々の戦いを支えている。全く野球に縁のない少年時代を送り、ひょんなことから日本で研究生活をスタート、プロ野球にその力量を買われるまでになった。そして将来は、母国中国と日本を野球で結びつけるという大きな夢を抱く。昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本とも戦った中国代表の可能性まで語ってもらった。(取材、文=THE ANSWER編集部 羽鳥慶太)
西武で打撃動作分析の専門家として活動する劉璞臻さん、変わりゆく現場で感じること
プロ野球の西武では、中国唯一の野球研究者が活躍している。今季から1軍のバイオメカニクス担当兼アナリストとなった劉璞臻(りゅう・はくしん)さんだ。打者の動作分析という観点から、日々の戦いを支えている。全く野球に縁のない少年時代を送り、ひょんなことから日本で研究生活をスタート、プロ野球にその力量を買われるまでになった。そして将来は、母国中国と日本を野球で結びつけるという大きな夢を抱く。昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本とも戦った中国代表の可能性まで語ってもらった。(取材、文=THE ANSWER編集部 羽鳥慶太)
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試合開始4時間前、西武の本拠地ベルーナドームのグラウンドには、タブレット端末を手にした劉さんの姿があった。昨季までのファーム担当(1軍がホームゲームの際は1軍も担当)から、今季は1軍のバイオメカニクス担当として、打者の技術向上をサポートしている。試合や練習で集めたデータを元に、コーチや選手たちとやりとりを行う。例えば、選手の映像や動き、ホークアイのスイング軌道。さらにバットのグリップエンドにつけてスイングの軌道を描き出す「ブラストモーション」という器具もある。そこから得られたデータを伝え、改善策を導き出すのも仕事だ。
ただ、劉さんには野球のプレー経験がほとんどない。中国で育った少年時代は、バスケットボールやサッカーをプレーしていた。2008年に行われた北京五輪で野球の魅力にとりつかれ、大学卒業後に筑波大の大学院で学んできた。野球経験といえば、大学時代に別の大学のチームに押し掛け、体験や練習をさせてもらったくらいだ。
これまで経験則で動いてきた現場に、データの重要性をわかってもらうのは本当に難しい。各球団2つの融合には知恵を絞っているところだ。劉さんも「データを見て、現場と研究者の目線って、やっぱり違うんです。僕には選手としての感覚はないので、そこは気をつけるようにしています。現場で役に立つためにデータがあるので」。選手の感覚にデータをうまく取り入れてもらえるように心を配る。
「こういう仕事をするのも初めてですし、周りは経験豊富で自分はわからないことばかり。新しい考え方を少しづつ浸透させるには、信頼関係が大事だと思います。客観的なデータの翻訳者として、言葉を選んで、その伝え方もすごく大事」。まさに、野球が変わっていく最前線にいる喜びを胸に働いている。
そして「今年からは1軍のスタッフになりましたし、ライオンズに貢献するのはもちろんなんですが……」という先に広がるのは、劉さんにしか持てない夢だ。