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「長距離×競歩」で狙う世界の頂点 東洋大監督夫妻、五輪メダリスト育成に生きる箱根駅伝の経験

大学陸上界では珍しい指導者夫婦がいる。箱根駅伝の常連校で通算4回の優勝を誇る東洋大学陸上競技部を2009年から率いる酒井俊幸監督と、監督補佐としてチームを支えながら18年から競歩選手を指導する妻の瑞穂コーチだ。今回の第100回箱根駅伝でも東洋大は下馬評を覆して総合4位となり、19年連続シード権を獲得している。夫婦揃って日本を代表する多くのランナーを育て、世界の舞台を見据えて指導を続けているが、インタビュー後編では、箱根駅伝優勝に3度導いた長距離陣の指導とともに、競歩選手を育ててきたメリットを明かした。五輪メダリストも輩出した競歩で得られた学びは長距離の指導にも生かされており、選手の「世界」を目指す意識の高さにもつながっているという。(取材・文=牧野 豊)

東洋大学陸上競技部の酒井俊幸監督(左)と瑞穂コーチ。長距離選手とともに競歩選手を指導、世界大会でのメダル獲得など着実な成果をあげている【写真:編集部】
東洋大学陸上競技部の酒井俊幸監督(左)と瑞穂コーチ。長距離選手とともに競歩選手を指導、世界大会でのメダル獲得など着実な成果をあげている【写真:編集部】

東洋大学陸上競技部(長距離部門)酒井俊幸監督&瑞穂コーチインタビュー後編

 大学陸上界では珍しい指導者夫婦がいる。箱根駅伝の常連校で通算4回の優勝を誇る東洋大学陸上競技部を2009年から率いる酒井俊幸監督と、監督補佐としてチームを支えながら18年から競歩選手を指導する妻の瑞穂コーチだ。今回の第100回箱根駅伝でも東洋大は下馬評を覆して総合4位となり、19年連続シード権を獲得している。夫婦揃って日本を代表する多くのランナーを育て、世界の舞台を見据えて指導を続けているが、インタビュー後編では、箱根駅伝優勝に3度導いた長距離陣の指導とともに、競歩選手を育ててきたメリットを明かした。五輪メダリストも輩出した競歩で得られた学びは長距離の指導にも生かされており、選手の「世界」を目指す意識の高さにもつながっているという。(取材・文=牧野 豊)

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 第100回大会で82回目の箱根駅伝出場となった東洋大学。2009年に酒井俊幸が監督に就任して以降、「世界」を意識して取り組む選手が増えていったが、それは「先んじて世界大会で活躍していた競歩勢の影響が大きかった」と振り返る。

 実は酒井監督、就任して間もない頃から長距離選手と一緒に競歩選手を指導してきた。

「東洋大学は伝統的に競歩の強豪でしたが、専任コーチが常駐しておらず、国際大会の代表を狙うレベルの選手でも外部クラブに練習に行くことが多かった。それならチームとして、長距離と一緒に練習したほうがいいのではと考えたのがきっかけでした」

 走る、歩くの違いはあるが、長い距離で速さを競う点に親和性はある。学校で練習できれば移動の負担も減り、何より同世代の選手たちと一体感を持って練習に取り組める。栄養指導や身体測定、フィジカルトレーニングなどを合同で行い、個別に行うメイン練習も長距離陣と同じタイムスケジュールを組んだ。

 2012年には当時2年生の西塔拓巳が20キロ競歩でロンドン五輪日本代表となり、翌年のモスクワ世界陸上選手権では6位入賞(後日、5位に繰り上げ)。ともに練習している仲間が世界で活躍する姿は、チーム内で良い刺激となり、選手の視線は高い位置に引き上げられる。設楽悠太(2014年卒/マラソン元日本記録保持者/西鉄)、服部勇馬(2016年卒/東京五輪マラソン代表/トヨタ自動車)らは、その流れの中で自然と世界を意識するようになっていったという。

 2016年リオデジャネイロ五輪では当時4年生の松永大介(現・富士通)が20キロ競歩で7位に入り、五輪では日本人史上初の入賞を果たした。

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牧野 豊

1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「NBA新世紀」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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