最強帝京大に伝わる格式高いジャージ授与式 塩で清め、監督は涙…V3の裏にあった決勝前の秘話
ラグビーの全国大学選手権決勝が13日、東京・国立競技場で行われ、帝京大が明大を34-15で破り、3大会連続12度目の優勝を飾った。創部100周年で5大会ぶり14度目の日本一を目指した伝統校を撃破。落雷による55分の異例の長さの中断を挟む悪天候の中、9連覇した2017年度以来のV3で王者の強さを見せつけた。140人の部員の中で伝統の赤のジャージを着た23人。前日には格式高い「ジャージ渡し」の儀式が行われ、指揮官も涙していた。(文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)
全国大学選手権決勝
ラグビーの全国大学選手権決勝が13日、東京・国立競技場で行われ、帝京大が明大を34-15で破り、3大会連続12度目の優勝を飾った。創部100周年で5大会ぶり14度目の日本一を目指した伝統校を撃破。落雷による55分の異例の長さの中断を挟む悪天候の中、9連覇した2017年度以来のV3で王者の強さを見せつけた。140人の部員の中で伝統の赤のジャージを着た23人。前日には格式高い「ジャージ渡し」の儀式が行われ、指揮官も涙していた。(文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)
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赤いジャージが国立を制圧した。雪が降り続いた極寒の決勝。帝京大は前半3分の先制トライからリードを許さずノーサイドを迎えた。2トライのHO江良颯主将(4年)は膝をついて涙。泥だらけの仲間を一人ひとり労った。「この帝京の深紅のジャージを着ているメンバーが、常に仲間のために走り続けようという姿勢が出た試合だった」。主将は赤く染まったスタンドを前に胸を張った。
伝統の赤ジャージを着られるのは、140人のうちわずか23人。だからこそ、神聖なものとして扱われる。毎試合後は、1年生が一人1枚ずつ丁寧に手洗い。終われば各学年5、6人の「ジャージ係」がチェックし、少しの汚れも許さない。さらに大学エンブレムの付いたキャリーケースに保管。この過程を経験することで、部員たちはジャージの重みを理解しながら成長していく。
試合前日に行うのが「ジャージ渡し」。9連覇した岩出雅之前監督の時代から引き継がれ、部内で「最も大事」とされる儀式だ。声を張り上げる控え部員の前で、メンバーがタックル練習。士気を高め、部員全員が手を洗ってからクラブハウスへ。ジャージが監督の机に番号順に並べられ、塩まで用意される。形は綺麗な円錐が決まり。指揮官の手で清められ、競争を勝ち抜いた23人に手渡される。
各試合ごとに行われるが、3連覇の懸かった今年の決勝前日はいつもと違った。「喜びを分かち合おう」。相馬朋和監督が涙を流しながら伝えた。最後は円陣を組み、校歌を大合唱。儀式はメンバー外全員が一緒になって想いを託せる大切な時間。メンバーは試合に出られない選手の悔しさを知り、戦う責任を受け止めた。
だから、明大に何度迫られても、どんなに痛くても、走り続け、タックルをかました。1年時から主力を張るFL青木恵斗(3年)は優勝後、自身が背負う6番の重みを明かした。
「ジャージは自分と同じポジションの人たちの代表です。着る者としての責任は体を張り続けること。痛いところ、しんどいところから逃げないことは決めている。帝京では『ジャージを着た者は、ジャージの価値を高めて返す』と言われているんです。だから、6番のジャージの価値を高めて返せるように頑張っています」
優勝ごとに新調される伝統の赤ジャージ。日本一の証しである星マークを1つ増やすからだ。強さの裏にあったメンバーの責任感。この伝統は新チームにも受け継がれていく。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)